若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

無口、小食、消極的

新聞の広告。
「話べたを直す」

こういう広告をよく見るので、話べたで悩んでいる人は多いのだろう。
私は自分のことを、「無口で、小食で、消極的」な男だと思っているのであるが、それを言うと笑われる。

なぜこう思うのか。
子供の頃、親戚に行って、そこのおばあさんに
「しゃべらん子やな〜」
「食べん子やな〜」
と言われたからである。

小学校の通知簿の性格の欄にいつも
「消極的」
と書いてあったからである。

子供に対して否定的なことは言わない方がよろしい。

何年か前、家内と知り合いの家に行ったとき、「私は無口」意識がよみがえってしまった。
私は、「嫁さんの横でボーっと黙ってる夫」と思われてはならぬ!とがんばってしゃべった。
その家を出た途端、家内が言った。
「よ〜しゃべるね〜!口はさまれへんやないの!」

得意先の社長で、話べたで無口な人がいた。
実務はすべて弟である専務任せであった。
どれだけ話すのが苦手かと言うと、自分の息子の結婚式での挨拶も弟にさせるほどだった。
いつもむつかしい顔をして、謹厳実直な学者という感じだった。

時々、話べたを直そうと努力しておられたようだ。
引きつったような表情で私たちに話しかけられるのであるが、長続きしなかった。

この会社の社員旅行に招待されたことがある。
大広間での宴会の挨拶ももちろん専務がした。
翌朝、朝食に行くエレベーターの所で、社長、専務、招待客がいっしょになった。

社長が私を見て、目を丸くしてニコニコ笑った。
そんな顔を見るのは初めてなので驚いた。

社長は私に
「いよー!久しぶりやなー!」と言った。

私は焦った。
いったいこれは?

「いやー、あんたにこんなとこで会うとはなー!」
どうしたのか?若年性突発痴呆症?

「長いこと顔見せんから、心配しとったんや。二、三年ぶりやな〜」
私は、救いを求めて周りの人たちに目をやったが、皆気まずそうな雰囲気でそっぽをむいている。

「あんたと山中温泉で会うとはな〜!」

たまりかねた専務が、困惑しきった表情で口を出した。
「社長!社長!これ、若草君ですがな。昨日の夜、宴会で社長の横で飲んでたやないですか!」

ニコニコしていた社長は、突如恐ろしい表情になって大声で叫んだ。
「わかっとる!ジョークや!ジョーク!」

無理はしないほうがよろしい。