若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

落語の会に行った

M君に誘われて落語の独演会を聞きに行った。

テレビで時々見る東京の落語家で、M君によれば中堅の実力派だそうだ。
会場は補助席も出る盛況で、新作二つと古典が一つという演目に、場内笑いの渦という盛り上がりであったが、私は一度も笑う気にならなかった。

?新作その一
テレビの視聴者参加番組に出た主婦の話。
「さばの味噌煮」を作って下さいと言われて、並べられた魚の中から、鯛を選んだりかつおを選んだりする。
その番組を見ていた母親と姑さんが、怒り狂って飛んで来るという話のどこが面白い?

?新作その二
腐ったような下町に「低級な人々」が住んでいる。その町の人形師が作った人形を見たいといってやって来るのが、フランス大使や外務省の役人などの「高級な人々」である。
そこで「低級な人々」が大騒ぎする話のどこが面白い?
落語家の低級さに腹が立った。

?古典
江戸の旅商人が、箱根で賊に襲われた大商人を助ける。
助けられた商人は江戸に帰る途中どういうわけか急死する。
ここで旅商人が死んだという誤解が簡単に生じ、帰りを待っていた女房は無理やり再婚させられてしまい、そこに旅商人が戻って来て大騒ぎになる。
旅商人の訴えを聞いた大岡越前守は、死んだ大商人の奥さんと旅商人を再婚させたので、しがない旅商人は資産三万両、使用人八十人という大店の主人になって、めでたしめでたしなどと誰が思う?
古典落語の中で、これほどお粗末で卑しい話はなかろう。

どれをとっても、ひとりよがりで不自然で俗っぽく、こじ付けとイヤミな誇張で笑いを強制しようとしているのが、まるで「今日はラッキー!」を読まされているようで、実に不愉快だった。
M君の狙いはこれだったのか?

終わってすぐ、私はM君に礼を言った。
久々に腹を立ててすっとしたし、落語という芸能がもうだめだという事もわかったし、本当に良かった。

M君は、Yさんよりましです、と言った。
以前、Yさんという女性を誘ってある歌手のコンサートに行ったら、Yさんは二曲聞いただけで席を立って帰ってしまったというのだ。

Yさんの、我がまま気まま振りを責めているようだったが、私は言いたかった。

隣がキミだったということもあると思うよ。
もし私に誘われたのなら、Yさんのような我がまま気ままな女性でも、途中で席を立ったりはしないだろう。

口には出さなかった。
武士の情けじゃ。