若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

衝撃の告発

母のいる施設に行く。

母におやつを食べさせてからMさん。
Mさんは、がっくりうなだれたまま口をあけるので非常に食べさせにくい。

食べながらいろいろ口走る。
「帰りたい」と言っていたかと思うと、「殺される」
同じ言葉をしばらく繰り返す。

「弁護士呼べ!」
94歳のおばあさんにしては珍しいセリフだ。
優良企業の創業者なればこそだ。

以前よく聞かされた話に、脱税事件がある。
「税務署、怖いで〜。朝な、九時に、黒い服着た男の人が、ダーッと入ってくるねんがな。そしたら、会社から電話や。『税務署来てます!』。同時にやるんやな〜。私、自分の部屋で、カバン持ってじっとしてたら、税務署の人が、『あ、ここ、おばあちゃんの部屋でっか?』言うてな、行ってしもた」
ここでMさんはいつもにやっと笑ってペロッと舌を出すのであった。

さすがのマルサも、この小柄で丸々した陽気なおばあちゃんが事件の黒幕であることは見抜けなかったのであった。

こういう話を聞いているから、「弁護士呼べ!」も納得できる。

Mさんに食べさせていると、向うのテーブルからKさん(88歳、女性)がこっちを見てなにか言っている。
この人は、機嫌の悪いことが多く、よく他の人を責めている。
また誰かを非難しているのだろうと思ったが、どうも私を見ているようだ。

「Kさん、どうしたんですか」と言ったら、私を指差して
「あほ!」

ひえっ!私ですか!?

Kさんは、難しい顔をして私をにらんでののしりつづけた。
そして、堪忍袋の緒が切れた、という感じで立ち上がると、こちらにやって来た。
私の前に立つと、恐ろしい顔で、「バカヤロウ!」と言った。

ショックであった。
この施設での私のモテモテ振りは、自他ともに許すものであった。
特に、80歳から100歳くらいまでのイケメン好みの女性には絶大なる人気を誇っていた。
私を見て、ニコニコと近づく女性はあっても、知らん顔されたことさえないのだ。

呆然とする私に近づくと、Kさんは「バカヤロウ!」と言って、私の肩を憎しみを込めてたたいた。
Mさんが、「弁護士呼べ!」と言った。
この施設でよく経験する、混線的一致だ。

Kさんは自分の席に戻ると、またこっちを見ながら、ののしっている。
再び立ち上がると、私の前に来て、「バカヤロウ!」と言ってたたく。
Mさんは、「弁護士呼べ!」と言ってくれる。