若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

複雑な日

今日は母の誕生日である。

母がボケてしまってからは、私にとって複雑な日になってしまった。
「おめでとう!元気で長生きしてねッ!」という気にはならない。
「なんだかなあ・・・」という感じの日である。

友人で、やはりお母さんがボケてしまった人がいる。
彼は、いつまでも長生きしてほしいという。
父親を早くに亡くしたからだろうか。

数年前に父が死んで、「心の中で生きている」という感覚がわかるようになった。
私の父は死んで、私の心の中で生きています。
実に自然である。

母の場合は困る。
私の母はどこにいるのか。
施設にいる母ではないように思う。
と言って、私の心の中にいます、というのも母に悪いような気がするし、事実、私の心の中にはまだいない。
困ったもんだ。

普段は、あまりこういうことを考えることはない。
誕生日、などに考えてしまう。
複雑な日である。

施設で、誕生日を祝ってくれる。
同じフロアの94歳のYさんがお祝いの言葉。
職員さんに、「おめでとうと言ってあげてください」と言われて、あらぬ方を見ながら、「おめでとうございます」
それを聞いて、いつも舌をべロンと出しているもう一人のYさんが
「よかったなア」

混線的一致である。
先日、私を、アホ、バカヤロウとののしったKさんは、今日は上機嫌であった。

八年前、母がここへ入居してすぐ、ある方の誕生祝いがあった。
職員さんが、男性入居者にお祝いの言葉を頼んだ。
その人は、非常に上品な紳士、という感じの老人であった。

立ち上がると、実に堂々と落ち着き払って挨拶を始めた。
これが、全くもうなんちゅうか支離滅裂無茶苦茶意味不明な内容なのであったが、最後まで堂々たる物腰で、挨拶(?)を終えられた。

よほど人前で話し慣れた人なのだろうと思った。
後で聞いたら、某国立大学名誉教授であった。

この施設で勉強になることは多い。

挨拶は、中味はどうでもよろしい。
肝心なのは態度である。
中味は、「模範文例集」で何とかなるが、「堂々たる態度」は、ちょっとやそっとで真似はできませんよ。