若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

年齢詐称

「年齢詐称」というのを時々聞く。

女性が定期券の年齢をごまかすというくらいは罪がない。
定期券の年齢では、私も後ろめたい思いをしてきた。

私の誕生日は6月20日で、定期の切り替えが6月15日前後なのだ。
申込用紙に年齢を記入するとき、なんか気がとがめる。
55歳と書きつつ、あと一週間で56歳なのに、と思う。
「年齢詐称」に近い感じがするのだ。

きのう、突然Tさんが来た。
息子の幼稚園でいっしょだった人で、その後も家内が親しくしていたが、十数年前、三重県に引っ越した。
我が家へは、四、五年ぶりである。

Tさんの息子も就職し、娘さんが大学受験という。
美術系の大学希望とのことで、Tさんの携帯にある「自画像」を見せてもらった。
堂々たる自画像だった。

「くるみちゃん」という子なのだが、42歳で産んだという話になった。
Tさんは笑いながら続けた。

「くるみには10歳サバ読んでるんです」
「?」
「32で産んだことにしてるんです」

母があんまりトシだとかわいそうだと思って、軽い気持ちでサバを読んだのだ。
そのうちにわかって、アハハと笑い話になると思っていたら、なんと、高校3年になってもばれないので困惑しているとのことである。

別に困ることはないと思うが困るのだ。
Tさん夫婦は同い年である。
先日、くるみちゃんに、「おかあさん、どうして10歳も年上の、あんなおじさんと結婚したの?」と聞かれたというのだ。

Tさんは、答えに窮して笑ってごまかすほかなかった。
ご主人にはいい迷惑だ。
同い年なのに、10歳も年上のあんなおじさん呼ばわりされるとは。

その後も、くるみちゃんから何度も問い詰められて、思い余ったTさんは、「お母さんを許してください。ほんとは49歳じゃなくて59歳なんです」という書置きを残して家出するような繊細な神経の人ではない。

今は、個人情報保護の時代、母親の年齢が出ることもないのではないかと話していて思い出した。
数年前、母のいる施設で百歳になった人がいて、小泉首相から賞状が届いたのだ。

Tさんの90歳の誕生日をくるみちゃんが祝っているところへ、総理大臣から「百歳おめでとう」という賞状が届く。

「ごめんね、くるみ。お母さんはほんとは90歳じゃなくて百歳なんだよ」
「ええ〜〜!お、お母さん!」

くるみちゃん、気を確かに持って、お母さんを許してあげてください。