若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

小西甚一著「俳句の世界」を読む

小西甚一さんを偉い人だと思ったのは高校の頃である。

「古文入門」という参考書を買ったら、著者がこの方だった。
当時、東京教育大学教授だったと思う。

序文にこう書いてあった。
「こういう参考書は、偉い先生の名前になっていても、弟子に書かせたものがほとんどである。弟子達が、前からある同じような本を参考に作るのである。若者が最初に手にするこういう本こそ、学者として全力で書かねばならない。この本は、例文の選択も含めて、私が心血を注いだものである」

「俳句入門」は、「俳句史はこの一冊で十分と絶賛された不朽の書」だと裏表紙に書いてある。
立派な本だと思う。

 離別(さら)れたる身を踏込(ふんご)んで田植えかな   蕪村

解説は、この離縁された嫁女が、煮えるような泥水に踏み込んで、その重労働の中に、悲しみも憤りもじっと包んで生きていくという女性の強さを詠んだもの、となっている。

納得である。
納得であるが、小西甚一さんは、唐突に、「この嫁女は、民主主義憲法のもとでキイキイ論じたてる女闘士とちがって言論の自由を持たず黙って働くより他なかった」「敗戦日本が屈辱と困窮の底から起ちあがった底力は、キイキイ女史から出てきたものではありません」と断言する。

血迷ったか!という感じであるが、この本が最初出たのは昭和27年であったということなので、先生の「乱心振り」はなんとなく理解できる。

小西さんは、当時の「民主主義」とか「男女同権」とか言う風潮を苦々しく思っていたんでしょうな〜。

小学校の時、近所の書道教室に通っていた。
ある日、おじいさんの先生が、突如怒り出したことがある。
「小学校で家庭科という時間ができて、男の子に裁縫を教えると言うとる!けしからん!旅先でふんどしを縫うくらい女中に頼んだらええのじゃ!」

どうしてこんなに怒るのか、誰がふんどしをしてるのかと不思議に思ったけれど、そういう時代だったのでしょう。