若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

杉本健吉さん

画家の杉本健吉さんがなくなった。
98歳。

去年、奈良県立美術館で開かれた「杉本健吉特別展」を見に行ったところだ。

こういう、「回顧展」を見たり、画集を見たりすると、一流の画家は、20代で光り輝くような傑作を描いて、その後数十年悪戦苦闘して、晩年にもう一度傑作を描くように思う。
杉本さんの展覧会は、かなりの数の作品が出品されていて、すべて水準の高いものであったが、「光り輝く」というような作品はやはり若い頃と晩年に見られたと思う。

一流画家なのだから、若い時からうまくて、年をとるにつれてますますうまくなって良い絵が描けるようになると思うが、そう簡単なものではないようだ。

杉本さんは、普通の画家と違って、画商に絵の販売を任せることをしなかったそうだ。
有力な画商に売ってもらうほうが経済的には楽だったはずだが、思うところがあったのだろう。

私は、趣味で絵を描いていただけだったが、一度だけ「画商との接触」があった。

高校を出てすぐの頃、卒業生が集まって大阪の画廊でグループ展をした。
私が自分の絵を見ていたら、その画廊の主人が色々批評してくれた。

そこへ美術部の顧問のT先生が入って来られた。
先生は、私の絵について主人があれこれ言うのを黙って聞いておられた。

主人が出て行くと、先生は私を怖い顔でにらんで
「なんだ、あれは!?」と言われた。
「画商か!画商に何がわかるんだ!」

はき捨てるように言われた。
大変な剣幕であった。

教育者としては非常に立派な先生であったが、「画家」として、あるいは「画家を志した者」として、「画商」に傷つけられたことがあったのだろうか。