鹿せんべいを投げる特訓ではない。
私の歌の特訓だ。
きのうはエレキギターのレッスンなのだが、大会の前はいつも尊師に歌を聞いていただくのである。
尊師は、ギター、歌、音響関係、衣装等、音楽に関することなら何でもこいだが、特に「お笑い系」に強い。
私に対しては、「ヤマハ音楽院講師」というより、「吉本学院講師」という色合いが濃くなる。
私は、46歳にしてハードロックギタリストを目指しギターを習い始めたのであるが、10年たって気づいてみると、「ハードロックギタリスト」というより「コミックソングシンガー」という感じだ。
これは、尊師の指導法に問題があったのではないかと思う。
私を、一人前のハードロックギタリストに育て上げようと言う気がないようだ。
昨日は、新曲「昔々のロックンロール」を聞いていただいた。
尊師は終始ニコニコと聞いておられた。
この「ニコニコ」が、肯定的ニコニコなのか否定的ニコニコなのか判断に迷うところだ。
尊師は温厚な方で、特に我々高齢者クラスでは否定的な言葉を口にされることはない。
私のギターがどんなにヘンな音を発しようと、Yさんの歌がどれほどずれようと、聞き終わった尊師はいつもニコニコとして
「ま、いいんじゃないでしょうか」
と言われる。
ニヤニヤして言われる時もあるし、吹き出しながら言われることもある。
いつもこんな風に言われると、冷たく突き放された感じがするはずだが、尊師の人柄と言うか人徳と言うか、そんな感じはしない。
温かく突き放された感じがする。
昨日も尊師はニコニコと聞いておられるだけであった。
もっとも、発声をどうしろとか、感情を込めてとか言われても困るが。
私はカラオケにも行かないし、年一度若草山で歌うだけなので、とりあえず声を出して歌っておきたいのだ。
先日、このCDを作るために家で大声で歌っていたら、家内が血相を変えて部屋に飛び込んできて
「やめて!外に丸聞こえ!」
と叫んだ。
私は平気だ。
エレキギターが聞こえようが、歌声が聞こえようが、ご近所の皆様が私だと思うわけがない。
私は、「いつもお澄まし、一見紳士風」という感じで外を歩いているから、エレキギターや間抜けな歌声と結びつくはずがないのだ。
近所の人達はきっと、「またあそこのバカ息子だ!」とニガニガしく思っているはずだ。
こんな親を持った息子が気の毒である。