若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

白い巨塔:最終回前編

「白い斜塔」と言われた「株式会社なにわ病院」は、里見社長の努力もむなしく倒産した。

その上、度重なる医療ミスにより、「なにわ病院」のすべての医師、看護士の免許が剥奪され、全員路頭に迷うことになった。

窮状を救おうと、まず名乗り出たのは、財前五郎の愛人ケイ子ママであった。
ケイ子は、看護婦達をホステスとして雇い入れ、新たにナイトクラブを開いた。
今は亡き五郎への思いを込めて、「クラブ第一外科」と名づけた。
財前の未亡人杏子がチーママとなり、ケイ子ママの片腕として活躍する。

「クラブ第一外科」で働く一人の初々しいホステスがいた。
それは、お嬢様意識をかなぐり捨てて、ネオン街の夜の蝶として羽ばたこうとする、東佐枝子のけなげな姿であった。
最初の日、彼女を指名したのは大阪でも有名な暴力団の組長であった。

佐枝子は緊張した面持ちで組長の隣に座った。
大胆に胸元の開いた超ミニのドレスに身を包み、けがれを知らぬ澄んだ瞳で組長の眼をじっと見つめてあいさつをした。

「組長様、本日はご指名いただきまして有難うございます。ふつつか者ではございますが、ご指名をいただきましたからは、できる限りのサービスをさせていただきたいと思います。
申し遅れましたが、私、当クラブのホステス、佐枝子と申します。今後はどうぞ『佐枝たん』とお呼び下さい。

私事ではございますが、私の父は国立大学病院の外科医長をいたしておりました。国立大学病院暴力団、形は違いますが、組織を統率する難しさに変わりはないと思います。せめてこの場におきましては日ごろの悩みを忘れていただけるよう、精一杯努めさせていただきたいと思います。

なにぶん不慣れのため不行き届きの点多々あるかと存じますが、お気づきの点ございましたなら、遠慮なくご指摘ください。
お客様からの貴重なご意見を今後のホステス稼業に活かしていきたいと思います。

私、営業成績ナンバーワンホステスを目指したいとは思いません。お客様満足度ナンバーワンホステスを目指したいと思っています。数字は後からついてくるものだと思います。お金はその又後からついてくるものだと思います。お客様のポケットにいきなり手を突っ込む様なマネだけはしたくありません」

「なっがいせりふやな〜!」

誠実さが評判を呼び、佐枝子がナンバーワンホステスになるのに長くはかからなかった。