たまに、電車で大声で話す人がいる。
会話にしても、ケイタイにしても、聞いていて不自然と思えるほど大声で話す人がいるものだ。
逆に、声をひそめて話す人もいる。
聞かれてはまずいと言うより、周囲の人に気をつかってのことだろう。
気配りもいいが、私は大声で話す人のほうが好きだ。
小さな声で話されると、よく聞き取れないのでイライラするのだ。
そういう時私は、「すみません、もう少し大きな声で話してください」と言うようにしている。
二人で話していて、一人の声が大きいと、不思議にもう一人は声が小さい。
二人で大声で話すというのはないようだ。(中年女性を除く)
先日の二人もそうだった。
久しぶりに偶然出会った大阪府立高校の先生だ。
どちらも50代の男性だが、一人が大声、もう一人がひそひそ。
大声の先生は、今年から赴任した高校がこれまでの赴任先より程度が低いとこぼしている。
補習なんかしてもあまり意味がない、こういう学校では、生徒も先生もあまりやる気がないから、なにをしても効果が上がらない。
その点、先生とこは、とひそひそ声の相手に遠慮なくあびせかける。
校名などすべて実名入りである。
ひそひそ声の先生が、某外大の中国語科の出身であることまで、大声で教えてくれた。
サービス満点で非常によろしい。
この先生の授業は分かりやすいと思う。
だいぶ以前に、やはり先生同士が話していた。
「大声」と「ひそひそ」の組み合わせであった。
しばらく学校の話をした後で、大声の人が話しだした。
「ボクの友達が離婚しよるんですワ。嫁さんの方が浮気しましてね。別れてくれいう話になって、友達が相手の男と会うことになったんですワ。
ボクに立ちおうてくれいうんで、ついていきましてん。
そしたら、相手の男いうんが、ええ男ですねん。かっこええんですわ。
それで、話し出したら、また感じのええ男でねー。
ボク、こっちの方がだいぶ上やなー、嫁さんがこっちに行くのムリないなーと思いましたワ。
帰りがけ、友達のおらんとこで、ボク、その人に、『がんばってください』て言うたんですワ」
あんまりではないか。
妻に裏切られた上、信頼し、頼みとする友人にまで見放されるとは。
私は、そのまだ見ぬ「ボクの友達」に、「がんばれー!」と心からの声援を送ったのであった。