若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

雨が降ります

雨がしとしと降っている。

雨が降ります雨が降る
遊びに行きたし傘はなし
紅緒のかっこも緒が切れた

子供のころ、一番嫌いだった歌だ。
インインメツメツたる歌だ。

子供にとっては雨が降るだけでもいやなものだ。
おまけに傘がない。
その上下駄の鼻緒が切れてしまったと言うのだ。

子供心に、「八方ふさがり、お先真っ暗」といった感じに押しつぶされる思いで聞いていた。

最悪の歌だ。
こんな歌を作ったのは誰じゃ!と思ったら、北原白秋だった。
このとき白秋は「ウツ」だったのではないか。

学校から帰ったら下駄をはくという暮らしを、いつごろまでしていたのだろうか。
小学一、二年生のころ、雨の日に傘をさして友達の家に遊びに行った。
友達はいなかった。
がっかりして帰る途中、下駄の鼻緒が切れてしまった。

足を引きずって歩いていたら、通りがかりの着物を着たおばさんが、
「ぼく、ちょっと」
と言って、たもとから出した布をピーッと裂いて鼻緒にしてくれた。

その頃、自転車で、傘の修繕に回るおじさんがいた。
独特の調子で、声を張り上げる。

「かぁさ〜〜、修繕!
 こうもりがさの〜〜〜、張り替え!」

「傘」と「こうもり傘の」を、のんびりと言う。
「修繕」と「張替え」は非常に短く言う。
名調子であった。

昔は、こういう商売が多くて、売り声のまねをするのが私たちの楽しみの一つだった。

大八車にさお竹を乗せて売り歩くおじさん。
「さお〜〜〜〜〜だあああ〜〜〜〜け」

小柄な豆腐屋のおじいさんは、曲がった腰で鐘を鳴らしながら
「お焼きにこんにゃく!あっつぁげ(厚揚げ)にうっさげ(薄揚げ)!豆腐!」
最後の「豆腐!」は怒ってるように言った。

「とぎ屋」というのだろうか、そのおじさんは
「はさみほうちょうかみそりの刃○○○」と言って歩いた。

この「○」の部分が聞き取れない。
「カイックイッカイッ」と聞こえたのであるが、なんと言っていたのだろうか。

「らおーっ!」と一声で、愛想なかったのは、「らお屋」のおじさんだ。
キセルの竹の部分の修理屋さんだったか。

「いかけ屋」のおじさんは
「いかけ!」と言ってるであろうが、「い」がほとんど聞こえないので
「かっけー!」と聞こえる。

おじさんが地べたに座って、なべの底の穴をふさいでいるのを、私たちはしゃがみこんで見物していた。