若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

小さな悪魔の大きな失敗

発表会ではいろんなことがある。
素人の発表会の醍醐味は、演奏よりその突発事故だ。
突発事故を楽しむのが本来の姿だろう。
演奏を楽しみたければ、プロの演奏会に行けばよろしい。

昨日の発表会で、「小さな悪魔」を歌ったYさんが、歌詞を忘れてしまった。

これまで何度かいっしょにステージに立ったが、歌詞を忘れたのは初めてだと思う。
それも、かなりハデな忘れ方であった。
もちろん、私はギターで精一杯だからはっきりしないが、半分くらいは歌えなかったのではないか。

伴奏していて、歌が聞こえなくなったとき、私は別に心配しなかった。
Yさんに限らずよくあることだし、これまでもYさんは何度も脱線から復旧している。
そのうち復旧すると楽観していたのであったが、今回は復旧しなかった。

Yさんも困っただろうが、私も困った。
私は、ギターのパートを、独立、自立して責任を持って演奏しているのではない。
ドラムに頼り、ベースに頼り、特に歌に頼っている。
歌が聞こえるから、曲のどのあたりかということがわかるのである。
歌詞を忘れられると非常に迷惑だ。
私は、伊達に「要介護ギタリスト」を名乗っているのではないのだ。

「小さな悪魔」は、短い単純な曲だが、それでも歌が聞こえないと心細い。

終わってから、センベー君に、「鹿之助さん、怒って演奏してるように見えましたよ」言われた。
とんでもない誤解だ。
怒っていたのではなくて、焦っていたというか、苦慮していたというか、途方にくれていたというか、切羽詰っていたというか、まあ、平静でなかったことは確かだ。

私もこの12年の間には、何度も大きな失敗をして、そのつど不死鳥のようによみがえってきたのであるから、他人の大失敗は大歓迎だ。

演奏が終わってからのインタビューで、Yさんは、「曲が曲だけに、小さな悪魔が乗り移ったんですよ」と、にこやかに答える余裕などあるはずもないのであった。