会社の近くの神社の、いちょうの葉が色づいている。
私が生まれて初めてかまされたダジャレが「いちょうの葉」だ。
幼稚園のときだった。
たぶんそのころ、しょーもない漫才で使ったんでしょう。
「いちょうの葉」と「胃、腸、脳、歯」
そしてたぶん、近所の小学生たちが喜んで使っていたのでしょう。
私が、表を歩いていると、近所のお兄ちゃんたちが集まってわいわい言っていた。
私が近づいていくと、四年生だったか五年生だったか、「さだおちゃん」がうれしそうに声をかけた。
「鹿之助ちゃん、いちょうの葉、持ってるか?」
想像するに、「さだおちゃん」は、そのとき引っ掛けられたところだったのですな。
皆に笑われているところに私がのこのこ現れたのである。
いいカモだ、と「さだおちゃん」は喜び勇んで声をかけたのであろう。
しかし、時期が悪かった。
私は、前の日に幼稚園から落ち葉拾いに行ったところだったのだ。
夢中になって、紅葉やいちょうの葉をいっぱい集めて袋に詰めて、幼稚園に持って帰って教室の「お道具入れ」に詰め込んだのだ。
いちょうの葉を持ってるどころの騒ぎではない。
取れたてのほやほや!
いちょうの葉、大量入荷!
私は大威張りで勢い込んで答えましたネ。
「うん!持ってる!家にはないけど、幼稚園の『お道具入れ』にいっぱい持ってる!きのう、落ち葉拾いに行って・・・・」
私は、楽しかった落ち葉拾いのことを一生懸命にしゃべった。
「さだおちゃん」は、たじたじとなって聞いていた。
まわりの皆も、「ありゃりゃ」と薄ら笑いを浮かべていた。
私の話が終わると、私をカモにしそこなった「さだおちゃん」は、憮然として説明した。
「あのな〜、鹿之助ちゃん、いちょうの葉、言うたらな、『胃』と『腸』と『脳』と『歯』やねん」
なんじゃそれは。
全員しらけておりました。
初めてダジャレの洗礼を受けた記念すべきあの秋の懐かしき日より幾星霜。
今では私がダジャレの洗礼で周囲の人をしらけさせております。
成長したものだ。