若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「無言館を訪ねて」

窪島誠一郎さんの本だ。

無言館」は、先の戦争で死んだ画学生や若い画家の絵を集めた美術館だ。
画家の野見山暁治さんの呼びかけにこたえて、窪島さんが設立した。

窪島さんは、「無言館」を美術館と呼ぶのはためらいがあるようだ。
ここにある絵が、「美術作品」なのか「遺品」なのか、ということだ。

そういう難しい問題はさておき、この本には期待通りいい絵が収められている。
前にも書いたと思うが、どんな画家でも若いときの絵はいい。
画集を見たり、回顧展を見たりするとつくづくそう思う。
美術学校卒業くらいが一つの頂点のようだ。

私がこんなことを言っても説得力がないだろうが、州之内徹さんも書いていた。
洲之内さんは、画商として長年いろんな画家の作品を見続けてきた人だ。
その人が言うのだから間違いない。

先日読んだ、「芸術随想:おいてけぼり」という本に、若いころたいしたことのなかった画家が、努力に努力を重ねてすばらしい絵を描くようになることなど絶対にありえない、と書いてあった。

恐ろしいことを、愛想もなく言い切ってある。

同感です。
だから、戦没画学生の遺作集ならいい作品が集まっているはずだと思った。

いい作品集だ。
大傑作と言えるほどのものはないと思う。
しかし、いい。

傑作や力作や超大作でなくてもいいというか、傑作や力作や超大作よりいいのではないかと思える。

文章でもそうだ。
傑作や力作や超大作より、ほぼ毎日のように千字くらいでとりとめのないことを書いてあるほうがいいのではないか。

ん?なにが言いたい?などとヘンに勘ぐる人はよほど心のねじけた人だ。