若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

まねしごんぼ

子供のころ、人の真似をした子を、「まねしごんぼ!」と言ってはやした。

朝刊に、『おとなのロック』という「雑誌的書籍」の広告が出ていた。
少し前に、『アエラ』の特集号で似たようなのが出たところだから、「まねしごんぼ」と思ってしまう。

娘たちが小さい頃、「シルバニアファミリー」という小さな動物の人形のおもちゃのセットを買ってやったことがある。
私は、子供におもちゃを買ってやって、子供が喜ぶのを見て喜ぶような父親ではなかった。
子供といっしょになって遊んでやって子供が喜ぶのを見て喜ぶような父親でもなかった。子供といっしょになって遊んで喜ぶ父親だった。

だから、たまたまデパートで見かけた「シルバニアファミリー」の家と人形を買ってやると言ったとき、長女は、うっとりと「夢でもこんないい夢見たことないワ」と言った。
なぜ買う気になったかというと、私が子供のころ、たぶん父の姉たちが遊んだ、古い、西洋風おもちゃハウスが家にあって、見ているだけで楽しかったのを思い出したからだ。

私が子供におもちゃを買ってやったのは二回だけだ。
娘たちが夢中になっていたテレビの「宇宙刑事シャイダー」の人形を買って帰ったことがある。このとき娘はボーゼンとした表情で、「パパがシャイダー買ってくるとは思わんかったなー」と言った。
意外性というのは大事ですね。

シルバニアファミリー」シリーズが発売されてしばらくして、他のおもちゃメーカーが、まったく同じ商品としか言いようのない「メイプルタウン物語」シリーズを売り出したとき、私は「まねしごんぼ!」とはやす気にもなれなかった。
情けないではないか。

昔々読んだある経済学者の文章を思い出した。
その学者が静岡に行った時、その地方一帯がイチゴ畑なので、どうしてこうなったのか、イチゴ農家の人に聞いた。
「誰かがイチゴで当てたとなったら、おれもということになるじゃないですか。それが人情と言うもんでしょう」

経済学者は、『ロビンソン・クルーソー』で有名な、ダニエル・デフォーを思い出す。
デフォーは、国王の顧問として経済政策を提案した。
「オランダやスペインでは、毛織物工業はある地域に集中していて効率がいい。イギリス人は人の真似をしたがらないので、政策として強制的に集中させなければならない」

イギリスでは、当てた人の真似をしないのが人情だったようだ。