若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

金柑

今年のはじめ、庭に金柑の鉢植えを置いた。

今朝、家内が、青虫がいると言うので見ると、なるほど二匹いた。
不思議である。
小さな鉢植えの金柑を、アゲハが見つけて、いつの間にか断りもなく卵を産み付けていたのだ。

アゲハがふらふら飛んでいるのを見かけるが、あれは気楽にふらふら飛んでいるのではないのか。
金柑あるいはカンキツ類の木を探して目を皿のようにして飛んでいるのか。アゲハに目があるのか知らないけど。

しかし、飛び回って金柑を探すくらいなら、生まれた金柑の側にずーっといればよさそうなものだ。
私ならそうします。
わざわざ当てもなく飛び立つというのが大自然の神秘だ。

中学のとき、理科の宿題でアゲハの観察というのがあって、しかたなく観察したことがある。面白くもなんともなかった。
十数年前、奈良に引っ越してきたとき住んだ家で、庭の金柑に青虫を見つけて楽しく観察した。
「アゲハの観察」は中学では早すぎるのだろう。
会社の課長昇進試験などにちょうどいいと思う。

部長が提出された観察日記を批評する。
「キミの観察日記は、なかなかよくできているよ。とくに、『アゲハが飛び立っていくとき、何だかうれしいようなさびしいような気がしました』という文章にキミの素直な性格が出ているね。ただ色鉛筆の使い方にもう一工夫ほしいな。これでは青虫なのかきゅうりなのかわからんよ。今回は見送りということにさせてもらうが、来年、そのあたりに注意すれば昇進間違いなしだ。がんばってくれたまえ」

前の家を建てた人が、戦中戦後の食糧難が身にしみて、庭に実のなる木ばかり植えておられた。
大きな金柑の木に青虫がたくさんいた。
捕まえて観察した。
観察と言うより、監視かな。いや、鑑賞だ。
食欲に驚いた。金柑の葉っぱを食べまくる。
アゲハは金柑でできていると知った。

見事なアゲハやクロアゲハになって飛び立ったが、私は、これは「空飛ぶ金柑」だと思った。
それ以来、アゲハが飛んでいるのを見ると、金柑が飛んでいると思ってしまう。

人類は、空飛ぶ夢をかなえるため飛行機を発明したが、金柑は空飛ぶ夢を実現するためアゲハを作ったのだ。
不思議に思う人もあるかも知れんが、これは私が観察に基づいて到達した真実である。