私と同じ世代の男なら、へびと言えば「ダーナ」だと思う。
冒険絵物語『少年ケニヤ』に出てくる超巨大ニシキヘビだ。
擬人化されていないので、この超巨大ニシキヘビは非常に恐ろしくて、神秘的だ。「いい人」には悪いことをしない。なんとなく「神様」に近い。
『少年ケニヤ』は、私が読んだ数多くの本の中でも特別の感動を与えてくれた。「特別の感動小学生版」。『小公女』とか、誰にもある「特別版」である。
父が買ってきた本だ。
父は思いついたように、たまに本を買ってきてくれた。
評判になっているのを新聞で見て買ったのだろうか。
せっせと名作を買い与えるような人ではなかったので、たまに買ってきてくれる本が印象に残ることになる。
『カバ大王様』『リボンの騎士』『少年ケニヤ』『神様とともに』『ますの大旅行』
以上五冊。
『カバ大王様』は硬い表紙で、色刷りの豪華漫画であった。
インターネットで調べても『カバ大王様』は出てこない。
違う題だったのだろうか。
次に買ってもらった『リボンの騎士』も夢中になって読んだ。
これも硬い表紙で色刷りの豪華本だった。
だいぶ後になって、『リボンの騎士』のことを「少女漫画」と書いてあるのを読んだときはショックであった。
「少女漫画」に夢中になっていたなんてちょっとおかしいのじゃないかと思ったのである。
『神様とともに』は、子供向け聖書物語である。いったい、父がなぜこんな本を買ったのか全くワケがわからない。このとき、「教会に行こう」とも言っていた。誰かキリスト教信者にすすめられたのだろうか。私は、教会ってどんなとこかな、と楽しみにしていたが、その後父が「教会」「キリスト教」を口にすることはなかった。
『ますの大旅行』は、一匹のますを主人公にした「大河ドラマ」だ。
読み終わって呆然とするほど感動したことを覚えている。
こういう本をどんなきっかけで買ったのか父に聞いておけばよかった。