若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

へび

今朝家を出ようとドアを開けてびっくりした。
ドアから一メートルほど先に、行く手をふさぐように長いへびが横たわっている。細くて非常に長いへびだ。
一瞬、二メートルくらいあるように思えたが、落ち着いて長さを目視で測定する余裕はなかった。

私が玄関を出ようとして急に立ち止まったので、家内が「どうしたの?」と聞いた。朝から絶叫は困るが、黙ってるわけにも行かんので、目でへびを教えた。

一人なら当然絶叫だが、頼りになる夫がついているので家内は息をのんだだけであった。
息をのんで立ちすくむ家内を見て、笑いながらゆっくりへびに近づき、しっぽをつかんで二、三度ふりまわして庭の向こうに投げ捨てるようなまねは私にはできない。
ヤモリはつかめるがへびはだめだ。
じっとしていると家内が「しまへびだからだいじょうぶよ」と言った。

なぬ?しまへび?
なぜそんなことを知っているのだ。
いつから「へび博士」になった?
「だいじょうぶよ」とは?
無責任ではないか。
毒蛇だったらどうするのだ。
こういう場合私は沈着冷静である。
軽挙妄動しない。

じっとへびを見つめていた。
すくんでいるように見えたかもしれんが、ちがう。
観察していたのである。

へびはまったく動かない。
バスに遅れるのでいつまでも観察してるわけにはいかん。
私はそーっとへびのしっぽの方から庭に出た。
やはり動かない。
死んでるのじゃないかと思ったが、首は持ち上げている。

家内を置き去りに知らん顔で出て行こうとしたら、「どうするの」と情けなさそうな声を出す。
しまへびでしょ!
だいじょうぶなんでしょ!

とは言うものの一家の主としてほうっておくわけにも行かんので、私はしっぽからだいぶ離れたところで地面をどんどんと踏んだ。
私はあくまで冷静だ。
突如飛び掛って身体をぐるぐる巻きにされて絞め殺されてはたまらん。
やられるのは私のほうだ。私を絞め殺すより、家内を絞め殺す方が難しいことくらいはへびの本能でわかるはずだ。
私はぐるぐる巻きにできても、家内は巻ききれないかもしれんと思うだろう。
そんなことを冷静に考えながら、もう一度どんどんしてみた。
と、突如するするっとすべるように芝生の上を動いた。
すばらしい!
見事な動きである。

家内が、「はやいねー!」と感心しているすきに私は家を出た。