甥の金太郎が10月に結婚する。
本名ではない。小さい頃金太郎みたいだったのだ。
子煩悩であった父は、初孫の金太郎をかわいがった。金太郎が生まれて、私も自分が子供好きであると悟った。金太郎を風呂に入れるのに父と奪い合いしたものだ。
私の祖父も子煩悩だったそうだ。
私が生まれる前に死んでいるので直接は知らない。
雛祭には娘の友達を呼んで踊りを踊って見せたりしたという。
書をたしなんだり、道具を集めたり、趣味人であったようだ。
高校の頃、祖父の仕事関係の古い「会報」のようなものを見つけた。祖父のことを「艶福家」と書いてあった。高校生だった私は、おじいさんはモテモテだったんだな、とは思わず、いやな感じがした。
このトシになって、わが半生を振り返ってみると、自分には祖父のモテモテの血が流れていたのだと、粛然と襟を正さざるを得ない。
なんの話か。
甥の結婚だ。
甥が結婚すると聞いたとき、披露宴であいさつを頼まれるかもしれないと思った。幼い頃の思い出をまとめて、原稿用紙に書いておいた。
先日、妹から、「息子が、披露宴でおじさんに頼みたいことがあると言っている」と言ってきた。
むはは。備えあれば憂いなし。
昨日、甥からメールが来た。
披露宴で「鹿せんべいツイスト」を歌ってほしいというのだ。
親族代表のあいさつではなく余興か(-_-;)
まあいい。私は張り切ったが、家内が顔を曇らせた。
私が披露宴で歌って踊るなら欠席するという。
「鹿せんべいツイスト」熱唱で花を添えるつもりであったが、大輪のバラのような家内が欠席だとさびしい披露宴になる。悩むところだ。
悩んでいると、「いっちー」から電話がかかった。
ドラムをたたく若者で、何度もステージを共にしている。
結婚して今年子供ができたので、演奏活動は休んでいるはずだ。何かと思ったら、彼の仕事関係でイベントをすることになって、私に若草鹿之助として、歌とトークで出演してほしいと言うのだ。
モテモテではないか。
彼は、私とユーモアのセンスがあうと言ってくれる。
彼はヤマハで一番寒いジョークを飛ばす男として有名なので、そう言われても複雑な気分だ。
甥の結婚式と重なるので残念ながら断った。
家内は、毎年若草山山開きで私が歌って踊るのに泣かされてきたが、今後泣く機会が増えそうな気配である。