朝の駅で、最近は女子高生二人組とならんで電車を待つ。
はででにぎやかな子と、はででもにぎやかでもない子だ。
はででもにぎやかでもない子が、地味でしとやかであるとは思わない。
はででない子が先に待っていて、そこにはでなほうの子がどたばたと走ってきて、息せき切って「聞いて聞いて!」と話し出すところから私たちの一日が始まる。
二人は「特進クラス」だ。
物理の試験がどうだったというような話をたまにしているが、ファッション関係の話が多い。
今朝は、「聞いて聞いて!今日、すっぴん!ミルクローションつける日なんやけど時間なかってん」
ミルクローション一つでにぎやかである。
しかし、この子は単なるにぎやかさんではない。
時と場合ということは心得ている。
先日、はででない子が親がケータイを買ってくれないと言ったときだ。
「お母さんがな、『お父さんが、○子にケータイ買ってやろか、と思うくらいがんばってみなさい』って言うねん」
はでなほうの子が何か言うかと思ったが、彼女は黙っていた。
いくらにぎやかなこの子でも、問題があまりに深刻なので、軽々しくコメントするのを控えたのであろう。
ことの軽重がわかっている。
見直した。
私たち三人が仲良く電車を待っている間に、向かいのホームに奈良行きの電車が着く。
ちょうど目の前に、保育園くらいの男の子がこちら向きに座っていることがある。
黄色かピンクの帽子をかぶって、ぼうっとこっちを見ている。
前にお母さんが立っている。
ふつうの男の子で、眠たそうな顔で外を眺めているだけであって、この子を見るのが楽しみで仕方がない!毎朝なんとしてでも見たい!というほど芸術点技術点が高いわけではないが、まあ楽しみである。
私は何度か意識してその子に笑ったりヘンな顔をしてみせたりしたが無反応であった。
寝ぼけてるのだろう。
高校生二人はまったく無関心のようであったのだが、今朝はどういうわけかはででないほうの子が、
「あっ!あの子、こっち見てる!」
ちがうよ、ぼうっと外を見てるだけだよ、と言おうと思ったがやめた。
二人は手を振りはじめた。
無反応。
猛烈に手を振る。
お母さんが気づいて、男の子の頭をぽんぽんとたたいた。
無反応。
二人は激しく手を振りながら、「ねぼけてるんちゃうか」
てれてるんやろ、と言おうと思ったがやめた。