このところ、台風が来ない。
来てほしいわけではない。
子供のころはよく来たように思う。
伊勢湾台風とか第二室戸台風とか、恐ろしい思いをしたものだ。
九州、四国、大阪というのが台風の通り道だったはずだ。
台風の道が変わったのか。
自然の恐ろしさは、体験したくない。
体験したほうがいいようにも思うが、体験したくない。
自然の恐ろしさ体験ツアーくらいはいいか。
わざわざ体験なんかしなくても、いずれ思い知らされるのかもしれない。
以前、北海道の人が、台風情報で、「台風は北海道に抜けました」などといわれると猛烈に腹がたつといっていた。
そうでしょうな。
三十年前、石垣島に行ったとき台風が来た。
島の人に、ここは台風が多いんでしょうねといったら、昔は台風はなかったといった。
台風がなかった？
ラジオで気象情報を流すようになってから台風ができたというのだ。
なるほどね。
ラジオのないころは、「今日はやけに風が強いな、ひどい雨だな」ですんでいた。
台風13号はなかった。
14号もなかった。
ラジオが台風をつれてきた。
迷惑な話だ。
先日、ＮＨＫの番組で漁師町を取り上げていた。
その日は、しけになるだろうというので漁師達は漁に出なかった。
「しけになるかな、というのは、雲の様子とかでわかるんですかね｣
「いや」と、日焼けした老漁師はケータイを取り出して、「コレコレ。天気予報」
サービス精神のない漁師である。
せっかく話を振ってるんだから、ぐっと目を細めて岬を見つめ、「うむ、あの松の木の上に雲がかかりだすと、ハア、昔っから船は出すなといわれたもんじゃて」くらいはいってほしかったです。
