同窓会といっても、妹の同窓会である。
大学の恩師K先生を招いての同窓会。
K先生ファンの私に、妹が報告してくれた。
明治44年生まれのこの先生を、直接知らない私としては、「グレートマザー」と、わけのわからん呼び方をしたくなる。
妹は、某女子大の食物科に学び、卒業後は食物科助手として勤めた。
妹の大学では、助手として大学に残るには、学業成績が優秀であるだけではだめで、容姿端麗、人間的にも他の範となることが求められる。(妹談)
食物科の助手をつとめた、頭脳明晰、容姿端麗、人格高潔、真に大阪のセレブと言える女性たちが一堂に会するだけでも壮観である。
見たことないので知りませんが。
そこに96歳のK先生が臨席され、ホテルのテーブルを囲むのである。
K先生が横たわるベッドを囲むのじゃないですよ。
先生の車椅子をお孫さんが押して、でもなく、娘さんに寄り添われてでもなく、一人で近鉄と地下鉄を乗り継いで、さっそうとホテルに到着されるのである。
えー!96歳で近鉄と地下鉄を乗り継いで都心のホテルへ、と驚くのはまだ早い。
一人暮らしの先生は、週二度、近鉄と地下鉄を乗り継いでデパートの地階で、食料品を買うのだ。
デパチカですよデパチカ。
自宅近くには、スーパーもあり市場もある。
しかし!
元食物科教授である。
食材を選ぶ目は厳しい。
手近で間に合わせることはしない。
いつも通り、同窓会では、7000円のフルコースをぺろりと平らげられたそうである。
同窓会の帰り、先生は阪急百貨店で、大豆と金時豆を買われた。
「乾物は阪急がええねんで」と言われたそうだ。
これが、みのもんたの番組で取り上げられたら、阪急の乾物売り場は大騒ぎになるところだ。
大豆と金時豆を買いながら、先生は妹たちに、「今やったら財布の口が開いてるから、好きなもんなんでもこうたげるで〜」と言われた。
別れ際には、「あんたら、早帰らんと、子取りがくるで〜」
すばらしい!
上質のユーモアの基礎は人間愛である!と教えられる。
ボケたりつっこんだりどたばたしていてはダメだ。
「未熟なり!鹿之助!!!」
先生に一喝された思いである。
K先生万歳!いつまでもお元気でと言いたいが、96歳というお年を思えば、気楽に口に出せるせりふではない。
うれしいようなさびしいような気持ちになる妹からの報告であった。