若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

「木のいのち木のこころ」

宮大工小川三夫さんの講演会に行った。

会場の、奈良町物語館の運営に携わっている女性Kさんが案内をくれた。
Kさんとは、娘の高校のPTAで三年間いっしょに役員をした。

すばらしい字を書く人だ。
初めてはがきをもらった時、感激した。

優雅な風貌をしのばせる水茎の跡麗しき、てなもんではない。
そんなものは、まったくしのばせない。

強力な文字だ。
女性が書いたとは思えない。
といって、男の字でもない。
人間離れしている。
はがきを手にしたとき、神のタタリか熊野権現のお札が舞い込んだ!と、思わず手が震えた。

霊気あふれるというか呪力に満ちたというか妖気漂うというか、実用的というよりも神秘的な文字なのではあるが、ピラミッドパワーとかバーミューダ魔の三角海域というようなハイカラな感じではなく、殷王朝甲骨文字という趣で、このはがきを逆さまにして、門に五寸釘で打ち付けておけば、疫病神貧乏神悪魔悪鬼ウイルスなどを寄せ付けぬだけの力を感じさせる。

Kさんからの案内のはがきの文字の霊力に導かれ、家内と二人、夕闇迫る奈良町を夢遊病者のごとくに歩んだ。
奈良町は、古い民家や商家の残る一角だが、古い町並みにとけこんだような浮いているようなおしゃれな新しいお店が、ところどころにあるのがつらいところだ。

古い家並みという点では、丑之助君の村がすごい。
初めて丑之助君の家を訪ねたのは、彼が、恒例の「ハードロック聞きまくり大会」を開いた時だ。

駅が立派なものだった。
時の流れに見捨てられたような駅、といっては失礼だ。
当たり障りのないよう、時の流れに見放されたような駅、といっておこう。

駅に降り立った私が、左手にひろがる田んぼと畑、右手の家並みを見て、迷わず右に進んだのが間違いであったと気づくのに長くはかからなかった。

不思議な雰囲気の村であった。
享保の改革による地方切り捨て政策、格差拡大路線の影響をまともに受け、致命的打撃を受けたまま、現在に至ったというような空気が漂っていた。

家並みは続いているのであるが、人の姿は見えず気配もない。
村はずれの万屋に入って、おばさんに丑之助君から聞いた住所を言った。
おばさんは、けげんな表情で、そこには家はないはずだと言いながら、方角を教えてくれた。

丑之助君の家は、ハードロック聞きまくり大会をしてもだいじょうぶなような所にあった。