東京の大学などで、はしかがはやっている。
子供のころにもよく聞いた、ポピュラーな病気である。
「はしか」「もうちょう」「おたふくかぜ」あたりが、子供も知っている病気だったと思う。
よく聞くからか、なんとなく、あまりこわくない病気という気がして、よくない。
病気をなめてはいかん。
子供のころこわかったのは、なんといっても「結核」だ。
「けっかく」は、「はしか」「もうちょう」などとは、格がちがった。
病気の中の病気、恐怖の象徴であった。
子供のころの楽しみのひとつが、葬式だった。
葬式があると、その家の前で、子供にお菓子をくれたのだ。
葬式!と聞くと、私たちは喜んで駆けつけたものだ。
あるとき、葬式!の報に、勇んで出かけようとした私に、母が、ダメ!と言った。
結核で亡くなった人の葬式だったのだ。
近所で、結核の御主人を看病していた奥さんが、御主人が亡くなってすぐ結核で亡くなるということもあった。
今朝、新聞の「はしか」報道を読んでいたら、家内が、「はしかにかかったことある?」と聞いた。
う〜ん、どうだったかなと、しばし考えて、突如思い出した。
ある!
長い間忘れていた。
薄暗い記憶である。
薄暗い部屋に、私は寝ている。
水枕をしている。
枕元に母がいる。
母は、大変に私を気遣ってくれている。
折り紙を作ってくれたか、本を読んでくれたか、なんだか忘れたが、ふだんしてくれたことがないことを、してくれた。
うれしかった。
うきうきするような気分をはっきり覚えている。
「いいのかな?えへへ」という感じだ。
人並みに大事に育てられたと思うが、「はしか」は、特別いい思い出である。
今、はしかになっている大学生たちも、いい思い出になりますように。