若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

黄金時代以後

S君と会うのに、電車に乗ったら、向かいの座席に女性の四人グループが座っていた。

例によって、降りるまでの三十分、遠慮会釈なくじろじろ観察し続けた結果、この四人は、「女系三代」と断定。

左端が、「母」で、六十代後半か。
隣が、「妹娘」で、その隣が、「姉娘」、共に四十歳くらい。
右端が、「姉娘」の娘である「孫娘」。
「孫娘」は、顔つきは、中学生とも小学生とも見えるが、体の大きさからすると高校生か。

関係を判定するまでに、三十分はかからない。
なおもじろじろと見ていたのは、彼女たちが、何をしているのか確認したかったからだ。

「妹娘」が、ひざにノートを広げて、しきりに書き込んでは、首をひねって考えこんでいる。
すると、のぞきこんでいた「姉娘」が、ノートを指差して、何か言う。

「そこは、こうしたほうがいいんじゃない?」と言っているのではないかと思うが、聞こえない。

言われた「妹娘」が、しばし考えて、「なるほど。それがいいわ」と言っているのじゃないかと思うが、声は聞こえず、ただ大きくうなずくのがわかるだけ。

すると、「母」が、「あんたたち、なに考えてるの?それは、こうなるからだめでしょ」と言ってるように思うが、言葉は聞こえず、二人が、「あ、そうか」という感じで、アハハと笑いくずれるのが見えるだけ。

あるときは真剣な表情になり、あるときは笑い、指差し、手を広げ、三十分間、ああでもないこうでもないと、しゃべり続けている。

ノートには、小さな丸がいくつか書いてあって、線が引いてあって、字や数字も書いてあるのが確認できた。

フラダンスのステージの計画か。
お花の展示会の相談か。
雰囲気からして、ローンの返済計画ではなさそうだ。

母である「姉娘」にべったり寄りかかりながら、所在なげだった「孫娘」も、後半になると首を突っ込んで、四人入り乱れてのあーでもないこーでもない。

見ていて、ハッピーであった。
三十数年前、この「母」が、可愛い「姉娘」と「妹娘」を連れて電車に乗っているのを見たら、私は、「おかあさん、今があなたの黄金時代ですよ」と言っていただろう。

黄金時代は過ぎましたね。
黄金時代は過ぎて、いま、何時代か知らんが、まあ、いいんじゃないでしょうか。