「かすむ」というのがどういうことか知らない。
「目がかすむ」のは知っている。
今朝、電車から大阪平野を見下ろすと、ぼんやりとかすんでいた。
春霞なのか、大気汚染なのかよくわからんが、遠くから見ている分にはいい感じだ。
春といへば霞にけりなきのうまで波間に見へし淡路島山
こういう歌を思い出した。
この歌を知ったのは四十年近く前のことだ。
妹は、学生時代書道をしていた。
妹が所属する書道の結社の月報に、お手本として出ていた。
どういうわけか覚えている。
その月報は、私も毎月読んでいたが、覚えているのはこの歌だけだ。
いい感じだと思ったのと、覚えやすかったからだろう。
何のへんてつもない、ああそうですか、と言うほかない歌であるが、ふと見た私が四十年間覚えていられると言うだけでも、立派なものだと思う。
作った人も、何百年か後、和歌にたいして関心のない男が覚えていてくれたと言うだけで感激だろう。
で、誰が作ったのか。
インターネットで調べてみた。
源俊恵という東大寺のお坊さんだった。
「千人万首」という所でわかった。歌人千人の歌を一万首紹介しようと言う、非常にありがたいホームページである。
源俊恵は、平安末期の人で、当時は非常に有名な歌人だったそうだ。
生まれた年はわかっているが、没年は不明。
落ちぶれたのだろうか。
父親は、源俊頼と言って、やはり非常に有名な歌人だった。
源俊頼は、七十四歳まで生きたことがわかっている。
当時としてはかなりの高齢である。
で、陰では人々から、「源年寄」と言われた。
と思う。