朝日新聞求人広告欄。
「ハイウェイ・パトロール隊員募集」!
おお!
私くらいの年齢の男なら、胸が高鳴りますよ。
50年ほど前、アメリカ製テレビ番組全盛期に、「ハイウェイ・パトロール」という番組があった。
小学生男子に人気であった。
貫禄のある隊長が、無線で指揮をとり、パトカーをぶっとばして、「ハイウェイ」を舞台に犯罪者達と戦う。
広い道やなあ、と思って見ていた。
朝日新聞の求人広告は、アメリカのハイウェイ・パトロールの隊員を募集しているわけではなかった。
日本の高速道路のお客様の、安全と安心、快適な御利用をサポートする人を募集しているのであった。
テレビの「ハイウェイ・パトロール」は、音楽が良かった。
勇ましく重々しい。
そのかっこいい音楽にのって、アメリカ人の、これまた勇ましく重々しいナレーションがひびく。
「・・・・・・ハイウェイ・パトロール!・・・!」
番組の内容を紹介していたのだろう。
「ハイウェイ・パトロール」は聞き取れたが、前後の「・・・・」「・・・!」はわからなかった。
わからないが、低音の英語にしびれた。
さて、「ハイウェイ・パトロール」が放映された翌日、学校へ行くと、クラスのU君が、重大な話があるという様子で、話しかけてきた。
「きのうの『ハイウェイ・パトロール』、見たか?」
「見た」
彼は、勝ち誇ったように笑った。
そして、驚くべき事実を打ち明けた。
なんと、ナレーションの「ハイウェイ・パトロール」の後で、何を言ってるかわかったと言うのだ。
な、なぬ!
小学生の分際で、あの、かっこいい、最後の、キメの英語が聞き取れたというのか!?
「なんて言うてるん?」
「『ハイウェイ・パトロール!エービーチャービー!』」
「エ、エービーチャービー!?」
ほんまか?
ほんまに、「エービーチャービー」て言うてるんか?
いつも待ち遠しい「ハイウェイ・パトロール」であったが、次回放映を待ちわびましたね。
私は、テレビの前に座って、その瞬間を待ち構えていた。
テーマ音楽が鳴り響き、さあ、ナレーションだ。
「・・・・ハイウェイ・パトロール!エービーチャービー!」
ほんまや!
エービーチャービーて言うてたんや!
U君を心から尊敬した。
久々に私の脳に聞きたい。
どうしてこんなしょうもないことをおぼえているのだ。