きのう家内とデパートに行ったら、催し物会場で世界の絨毯展。
う〜む、よくこれだけ、と感心するほどたくさんのペルシア絨毯があった。
ペルシア絨毯は美しい。
気楽に見物するはずであったが、そうはいかん。
客が一人も居なくて、販売員が何人も居る。
おまけに、二人はイラン人だ。
いや、イラン人かイラク人かレバノン商人かはわからないが、とにかく中東の人だ。
日本人販売員だけでなく、中東の人二人とは、気合が入ってます。
壁にかかったひときわみごとな絨毯。
すばらしい!
二千四百万円。
誰が買うんや、と思って見ていたら、中東の人が近づいてきた。
「その値段はね、つけてるだけですよ」
日本語が上手だ。
「絨毯は、あってもなくてもいいものですから、値札どおりで買う人はないです。交渉次第です」
交渉する気はありません。
家内が小さな絨毯に見とれている。
アラビアンナイトの宮殿の一室に、シャンデリアが下がり、壷に真っ赤なバラの花、という、いかにも家内好みの絵柄である。
「奥さん、いいでしょ。タペストリーにぴったりでしょ。四十万円ですけど、勉強しますよ」
「四十万円!」
「いや、勉強しますよ。奥さん、値段決めてください」
「え!でも、そういうわけには」
「いや、いいですよ。好きな値段言ってください」
「いやあ・・・」
「好きな値段言ってください。私、ダメって言いますから」
おもしろい人やね。
でも、ウチの奥さんの恐ろしさを知りませんね。
「どうぞ言ってください。四十万にとらわれず」
「そうお・・・じゃあ、タペストリーにして十万!」
「絶句!」
中東の人が絶句した顔を初めて見た。
世界共通ですな。
「絶句!」だから、言葉は出ない。
出ないが顔に書いてある。
目のあたりに「絶句!」とアラビア文字で書いてありました。
中東の人は、奥さんの本性がわかりましたというように、二メートル四方くらいの絨毯を出してきた。
「奥さん、これ、今回の目玉です。定価210万円ですが、39万でいいです」
やすっ!
理性ある人間なら買うべきだろう。
しかし、家内は30万に値切りかねない。
中東のテレビ、アルジャジーラで、「奈良に値切りの自爆テロ登場!」などと報じられては国際問題だ。
水を差そう。
「今日はたくさんありますね」
「はい。売るほどあるよ」
おもしろい人やね。