若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

春とは言えど

庭の芝生に先立って、頼みもしないのに雑草が、とは言うものの、緑に命を感じてうれしくないこともない。

きのうはM君と飲んだ。
気楽な自由人と言われるとイヤな顔をするM君だが、「大阪府気楽な人番付」で、ベストテンに入ることは間違いない。

私も、去年仕事をやめて、気楽な自由人の仲間入りをしたが、M君には負ける。
第一、彼には、ヤマハの発表会で、ギター、うまく弾けるかな、という心配がない。
気楽なもんだ。

家を出る前、自治会の回覧板が回ってきた。
「訃報」
亡くなったのは、64歳の男性だ。
これから飲みにいこうというのに、イヤな感じである。

M君と会ったら、高校で一緒だったYさんという女性が、二月に癌で亡くなったと知らされた。
またイヤな感じだと思っていたら、Yさんが亡くなった二週間後に、彼女のご主人も亡くなったというので、イヤな感じ三乗になった。

Yさんは、私が所属していた美術部に仲のいい友達がいた。
それで、しょっちゅう美術室にきていた。
私とは、そういう関係である。
というか、私とは関係ない。
関係ないというのも関係のひとつだとすると、関係ある。

十年ほど前、同窓会で、卒業後初めて顔を合わせた。
そのとき、私の脳は、彼女を正しく認識するのに大変苦労した。

顔を見た瞬間、「知ってる!」と判定した。
「親しかった!」と判断した。
「美術部!」という反応を起こした。
連鎖反応である。
ところが、次の瞬間、「いや、美術部じゃない!」という拒絶反応を引き起こした。

私の端正な顔が苦悶にゆがむのを見て彼女は笑っていた。
「えーっと・・・」
「ほら、美術部の○○さんに会いに、よく美術室に顔を出してた・・・」
「あっ!ヨコさん!」

彼女は、ヨコさんと呼ばれていた。
推理小説を書くのが趣味で、懸賞に応募しているが、落選ばっかりで、と嘆いていた。

読ませてほしいと頼んだら、すぐワープロ原稿を送ってきた。
物語の冒頭、私と同じ姓の登場人物が出てきた。
偶然なのか、サービスのためか戸惑った。

サービスのためでないことはすぐわかった。
その男は、躁うつ病でパチンコ狂だった。
犯人扱いされたあげく、真犯人である女に、階段から突き落とされて、あっけなく死んでしまった。

なぜ私の姓を使ったのか、質問状を出したが返事は無かった。
それ以来会うこともないままだった。