若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

田村圓澄『法然』

若草鹿之助商店名前だけ知ってる有名人の伝記を読む事業部活動報告。

法然の伝記はたくさんあって、室町以前で15種類ほどあるそうだ。
近代以前の人で、これだけ多いのは、聖徳太子くらいのものらしい。
ただし、法然伝は、種類は多いが、書いてあるのは同じことばかりだそうです。

法然は、高潔で誠実な人柄で、多くの人にしたわれたようだ。
昔読んだ、時の関白九条兼実とのエピソードが、印象的で心に残っている。

あるとき、兼実が、法然を自邸に招き、しみじみと法話に聞き入って、深く心を動かされた。
感動のひと時を過ごした兼実が、法然を見送ったとき、去っていく法然の、ひと足ごとに蓮の花が開き、その蓮の花には一文字ずつ、「南」「無」「阿」「弥」「陀」「仏」の文字が浮かび上がっていた。

夢幻的で美しい。
兼実の、法然に対する深い尊敬と、心からの帰依の念を示す、素晴らしい話だ。
と思っていた。
ところが、この本を読むと、関白九条兼実は、そんな純情な男ではなかった。

どうも、兼実にとって、法然は、「病気などによく効く今評判の」お坊さんの一人だったようだ。

兼実の日記『玉葉』によると、彼が「使った」お坊さんは、百人にものぼる。
実厳、智詮など、特に親しいとされるお坊さんもいた。

法然は、専修念仏を唱導し、阿弥陀仏を第一としていたが、兼実は、念仏も唱えたが、その信仰は、不動尊、吉祥天、尊勝陀羅尼など、多岐にわたっていた。

なんでもありだったのですね。
今でも、こういう人はいます。

みのもんたさんが「効く!」といえば、ココア、納豆、コンドロイチン、サメ軟骨、サルノコシカケ冬虫夏草グアバ、ぶら下がり健康器、ルームランナー等等、積極的というか、軽挙妄動というか、規制緩和というか、自由競争というか、あわれというか、あさましいというか、ええかげんにしなさいというか、勝手にしやがれというか、私にとっての数少ない美しいエピソードが、けがされたような気がしたのであった。