若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

まぶたの裏

「まぶたの母」は知っているが、「まぶたの裏」は知らないという人が多いだろう。

今日は、人物画教室。
今回のモデルさんは、ヘレニズム美人というか、ガンダーラ美人というか、天平美人というか、まあ吉祥天女系で、何となく描きやすく、すらすら描き進んだのであるが、進むにつれ、平板でおもしろくない絵になってきた。

先生のアドバイスを仰ぎたいところであるが、先生は、典型的「口で言うより手の方が早い」タイプで、「これからどうすれば・・・?」といい終わらないうちに、筆を取り、あっと言う間に描きあげてしまわれるので、助言を求めるのは最小限にとどめたい。

しかし、今日は、にっちもさっちも行かない状態なので、「これからどうすれば・・・?」といい終わらないうちに、先生は筆を取り、どんどんこげ茶色を塗っていく。

で、これが不思議と、影に見える。
先生が、唇の下に、茶色を塗るので、モデルさんを見たら、なるほど、そこには影がある。
あっちこっち、先生が塗るたびにモデルさんを見ると、やはり、そこは影になっている。
私の眼力のなさである。

私が描いた、鼻の頭の下を茶色く塗る。
いくらなんでもそれは、と思ったけど、より鼻らしくなりました。

今の今まで、平板凡俗であった私の人物画が、本格的人物画に変わっていく。

と、先生は、目の上に、黒で、かなり強い線を、グイッ!と入れた。
おお!
トロンと、死んだような目が、生き生きとした目になった。
しかし、どう見ても、モデルさんの目には、そんな黒い線はない。
まつげでもない。

これは聞かねばわからない。
「先生、その黒い線は、なんでしょうか」
「・・・これは、まぶたの裏やね」

ま、ま、まぶたの裏!?

そんなもん、見えますか?
目医者さんで、結膜炎の検査してるのとちゃいますよ。

しかし、そういわれてみると、なるほど、「まぶたの裏」ですな。
う〜む、と感心する私を見る先生の目は、「ネ、口でいうより手の方が早いでしょ」と雄弁に語っていた。