若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

林扶美子『下駄で歩いた巴里』

駅の高架下の、「中書店」に、ふらっと入った。
「大書店」「中書店」「小書店」のうちの、「中」である。
「小書店」は減っている。

大阪にいたころ、近所に「小書店」があった。典型的というか模範的というか、まあ、これより小さくては本屋として成り立たないのではないかと思える小ささであったが、その店は今も健在である。
店は小さいが、営業範囲が広い。おやじさんが、バイクで、週刊誌などを、喫茶店、病院、理髪店、美容院などに配達する。
昔は、どの本屋も配達してくれた。子供のころ、学校から帰ると、『野球少年』などが届いているのが楽しみだった。
この「小書店」は、古いサービスで生きのびている。

さて、ふらりと入った「中書店」は、一時はあちこちに支店を出して拡大路線を突っ走っていたが、このところ、次々と店を閉めて、縮小路線である。
どんな商売も大変ですね。

岩波文庫が置いてある。
「中書店」だから、棚に二段。「大書店」で、ずらーっと並んでいるのも、豪勢でいいけど、二段というのも、手ごろでよろしい。

『下駄で歩いた巴里』
気楽に読めそうなので買う。
昭和6年、流行作家の林扶美子が、どういうわけか女一人、思い立ってシベリア鉄道で巴里へ向かった記録のようだ。

パリでの、一人暮らし、いつも下駄をカタカタ鳴らして歩くので、町の人にすぐ覚えられた。パリの、「レコード屋」を紹介している。いろんなレコードを取り揃えて、売るのではなく、聞かせる店だ。客は、金を払って、レコードを選んで、ヘッドフォンで聞く。いつ行っても、多勢の客が、歌手の写真と、楽譜を見ながら音楽を楽しんでいる。

彼女は、パリで十日に一度ほど風呂に入った。風呂屋に行って入る。部屋に風呂桶がドンと置いてあって、ちょろちょろと湯が出る。風呂屋の女中が、「アルカリソーダ」を入れてくれる。身体がすぐ、サラサラになって、まるで自分が洗濯物になったようだと書いている。
「アルカリソーダ」、だいじょうぶなんでしょうか。
「入浴剤」と「洗剤」を足して二で割ったようなものか。

パリほど接吻の多い町はない、とも書いている。夕食時のレストランで、一口食べてはチュウ、飲んではチュウ、笑ってはチュウ。
ボーイに料理を頼んではチュウで、これがホントの注文ですネ、とは書いてない。