若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

S君の個展

きのうは、S君の個展に行った。

地下鉄なんば駅で、野球のユニフォームの上着を着たおばさん三十名ほどの団体を目撃。日本ハムファイターズのユニフォームだった。応援に行くのか。

画廊は、西梅田にある。
大阪駅から、西に歩けばいいのだが、これが難しかった。

私の頭の中にあるのは、四十年ほど前の大阪駅近辺の地図だ。
単純でわかりやすい。大阪駅前に立つと、左が阪急百貨店、正面が阪神百貨店で、右の方に第一生命ビル、旭屋書店。その、旭屋書店のほうに行けばいいのだが、大阪駅前が変わり果てていて、どこをどう進めばいいのかわからない。

歩道橋に登ったり、地下道へもぐったり、地上へ出たり、悪戦苦闘。
四十年前とは一変した街を歩いてやっとたどり着いた画廊は、四十年前そのままといった通りの、五十年くらい前に建ったビルの三階にあった。
もちろんエレベーターなんかない。狭い階段を上るのだが、階段の上り口に、おばあさんが立ってこちらを見ている。無表情で、じっとしている。
変わり者の、画廊の女主人かもしれない。入るとき、一応会釈したが、知らん顔であった。

ならんでいた作品は、いつものように花の絵が多かった。彼は、個展には、インテリアになるような絵出品するのだが、先日、私にお手本として描いて見せてくれた自画像の印象が強烈なので、そういうのを見たいと思った。

彼の生徒として、S君の肖像を描いてみたいと思って、そう言ったら、「いいよ!」と快諾してくれた。
「ボクは、キミ描くわ」。
私がS君を描き、S君が私を描く。

そばで聞いていたS君の知り合いの男性が、「60過ぎて、お互いに、描きあうんですか。何か、気持ち悪いですね」

そ、そうですか。いいんじゃないでしょうか。

美術部でいっしょだった女性Kさんが来て、三人で飲んだ。
魚料理の店で、いろんな魚が出てきた。何かの肝を食べたら、苦かった。
ウエッ!だいじょうぶかなと心配であった。
S君も食べて、「苦!だいじょうぶかな」と言った。
私は、用心して、それ以上食べなかったが、S君はしばらくして、また食べた。

「あれ?苦くないわ。時間がたったら苦味がぬけるんや」

いや、S君の舌がしびれて麻痺してきてるのじゃないか。
私は、警戒をゆるめなかったが、まあ、だいじょうぶのようであった。