若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ハンブルグ・ビフテキ

長谷川如是閑『倫敦!倫敦?』

朝日新聞の記者だった長谷川如是閑の、明治43年のロンドン見聞記。
好奇心旺盛で、観察力が鋭くて、文章のイキがいいから、楽しい読み物になっている。

アングロサクソンビフテキを喰う人種だ」
フランス人やイタリア人は食べないというのであるが、今でもそうでしょうか。

ドイツにもビフテキはあるが、まずいので有名だと書いている。
ハンブルグビフテキと称するがんもどきの様な奴に至っては言語道断だ」

ははあ、「ハンバーグステーキ」のことですね。
う〜ん、がんもどきねえ。
似てるかな。

「実感挑発的倫敦」という章がある。
この「実感」というのは、「本能」とか「欲望」とかいう意味で使っているようだ。

西洋の、文学や美術などの特徴のひとつは、「実感挑発的」なことだという。
その中で、イギリスは、やや傾向が異なっているというのが、著者の感想である。
パリや、ローマや、ベルリンは「実感挑発的」な街だが、ロンドンはおとなしい。

まず、ロンドンには、裸の彫刻が少ない。
たまたま開催中の、「ローヤル・アカデミー」でも、裸体画は少ない。

娼婦の化粧や服装も、パリに比べると、うんと地味であるが、この方面での日本人の活躍ぶりはたいそうハデで、困ったものであると嘆いている。

ロンドン子は、悪いことは何でも外人のせいにしていたようだ。
国際都市の便利なところだ。

ドイツ人やフランス人はロンドンにパンを拾いに来る。イタリア人やスペイン人は、パンを盗みに来る。アメリカ人や日本人は娼婦を買いに来る。ロシア人やユダヤ人は娼婦を売りに来る。インド人は暗殺に来る。

ドイツ人やフランス人でさえこじき扱いというのだから、大英帝国の鼻息の凄さがわかる。

イギリスは、伝統や慣習を重んじることも紹介している。
国会での規則なども、文章になっていないそうだ。

新米の下院議員が、先輩議員に、下院の規則を、どうしておぼえたらいいかと尋ねた。
「破っておぼえるしかないだろう」

なるほどね。
規則でしばりあげるとか、しばりあげられるとかいう感覚がおかしいのか。