若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

友達を描く

友達を描く、というと、小学校の図画の時間みたいだけど、還暦を過ぎたおじさんの話である。

高校の美術部でいっしょだったところの、今は私の絵の先生であるS君に、大学が夏休みになったら、肖像画を描かせてほしいと頼んであった。

暇ができたから来いと連絡があって、昨日行ってきました。
私がS君を描く間に、S君は私を描くという。
ますます、小学校図工の時間だ。

イーゼルを立てて、差し向かいにすわる。
いっしょに描くのはいいのだが、とにかく、S君という人は、昔から描くのが速い。
すわって私を見たと思ったら次の瞬間にはキャンバスに向かって木炭で描いてるなと思ったら次の瞬間には私を見てるなと思ったら次の瞬間には、以下同文。

顔が動きまくるので、描けませんよ。
ぼーっとしてたら、S君が、早く描けという。
う〜ん、じっとしてくれないとと思いつつ、先生の指示に従う。
きょろきょろという感じで動く顔を描くのは難しい。

デッサンは仕上がったけど、ちょっと男前過ぎる。
無意識のうちに、先生に気を使いすぎているようだ。

S君より、かなり若く、二割以上知的で、三割以上苦みばしったイケメンナイスミドルの顔になってしまった。
いくらなんでもこれではまずいと思って、S君に描きなおすといった。
すると彼は顔色を変えて、「そのままでいい!ボクの感じがよくつかめてる!」と語気を強めていった。
そうかな。

「それでいい!色を塗るぞ!」
強引に先に進める。

筆を持っても彼の手は速い。
速いのはいいが、手に五本ほど筆を持っている。

私に何と言った?
描き始めは、太めの筆一本で勢いよく描けといったではないか。
自分は、太い筆、中くらいの筆、細筆と使い分けている。
ずるいではないか。
抗議したら、「弘法筆を選ばず」とわけのわからんことをいってごまかしていた。

そういうわけのわからんところのあるS君であるが、私の絵を見ての指示は的確である。
自分の「男前画像」を死守しようという気迫のこもった指示であった。
その結果、当然のことではあるが、若く男前の「S君像」ができてしまった。

私は、かなり違うなと思うのであるが、S君は「よく描けてる」の一点張りだ。

で、高校の美術部で私たちといっしょだった女性Kさんに、「S君像」をメールで送って感想を聞いた。

「男前過ぎて気色悪い」とのことであった。