ある人のブログを読んでいたら、その人が学生時代に暮らしたアパートの写真が出ていた。
私が暮らした「日本アパート」とそっくりだった。
「日本アパート」は、木造二階建て、巨大おんぼろアパートである。
東館と西館があって、まあ、堂々たるものであった。
しかし、「日本アパート」とは、すごい名前をつけたもんだ。
大学の学生名簿に、まちがって、「日本カマート」と記載された。
友人たちから、「お前、どんなとこに住んでるんだ」と冷やかされた。
黒光りする広い廊下の両側に、四畳半の部屋がずらっと並んでた。
東館は学生が半分、労働者が半分という感じだった。
西館には、子供もいるような家族が住んでいた。
どうして暮らしているのか不思議だったが、二部屋借りていたのだろうか。
部屋の鍵は、自分で取り付ける。
が、出入りが激しいので、つけたりはずしたりで、ドアも柱も穴だらけである。
私も、鍵をつけたものの、釘でぶら下がってるという感じで、とても鍵を取り付けたといえる状態ではなかった。
取られるものもないし、それでよかった。
初めての下宿での一人暮らしは気楽なものだった。
入居して二週間ほどしたころ、夜中に目が覚めた。
なんか音がするのだ。
なんだろう。
おお!雨漏りだ!
漫画でよく見る、あの「雨漏り」である。
私の、四畳半の部屋に、ポタンポタンと雨がもっているではないか。
これが雨漏りか!
なんかうれしくなって、漫画でよくするように、洗面器で雨を受けた。
わ〜、漫画の主人公みたいやなあ、と思って喜んでいた。
が、喜んでいられたのはつかの間であった。
部屋中に雨が漏りだしたのだ。
部屋中といっても、四畳半ですが。
洗面器、コップ、茶碗、総動員しても間に合わない。
ざざ漏りである。
じゃじゃ漏りというのか。
布団もたたんで部屋のすみで小さくなって、傘をさして夜が明けるのを待った。
翌日は日本晴れであった。
幸いにして、被害は私の部屋だけではなかった。
日本アパート全滅なのであった。
屋根がはがされて、部屋の中から日本晴れの空を見上げたことが懐かしく思い起こされる。