若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

説教と漫談

白日会展。

いろんな展覧会を見てきたが、きのう書いたような「熱烈説教場面」に出くわしたことはない。
会員が切磋琢磨する「画塾」的雰囲気があるのだろう。

一枚の絵の前で、男性が二人、話している。
私より年上と思える先輩が、後輩の絵を批評しているようだ。

「この肩がおかしいわな。ごまかしとる感じやな。昔やったら、こんな、ちょっと見ておかしいとこがあるようなんは入選でけんかったんやで。まあ、良かったやん。入選できて。何年かかった?」
「10年」
「10年か。よかったやん。たいしたもんやで」

画面を指差しながら、細かく指摘する。
それが、「説教」という感じでなく、「漫談」みたいで面白いので、彼らが移動するのについて歩く。
先輩は、絵の前に立ち止まっては批評するのだが、いちいち的確である。

「どうや、この髪の毛。うまいもんやなあ。これ、描くの、おもろいんやろなあ。しかし、これではあかんな。ここには、もっとうまいの、なんぼでもおるからな。この線でいくんやったら、もっとがんばらなあかんわ」

写真のように描けている。
思わず質問した。

「一本一本描くんでしょうか」

その人は、いきなりの私の質問にも、ごく自然に答えてくれた。

「一本ずつ描いとるわ。面相筆使うて。それ用の刷毛もあるしな。おたく、インターネットやる?こいつら、自分の技法公開しとるよ。昔は秘密やったんやけどな。ここの連中、インターネットで公開しとる」

実にフランクでオープンな人だ。
後輩と思える人が、一枚の絵をさして感嘆の声をあげた。

「きれいな肌の色やなあ!」

見事な裸婦だ。

「これは、キャンバスと違うで。板やな。みっちり描いとるなあ。三ヶ月はかけとるで。お前は?」
「六ヶ月」
「モデル、何回頼んだ」
「10回」
「モデル代は?」
「・・7万5千円」
「大変やなあ。こいつのモデルは、嫁さんや。だからな、絵描きは美人と結婚せんとあかんのや。家具かて、あんな安もん描かんと、高級家具買わんとあかんで」
「・・カネないもん」

いつのまにか「後輩」はいなくなって、「先輩」と私の二人で回る。
何を質問しても、親切に答えてくれた。

「あんた、いくつ?まだ若いやん。ここ、年寄り多いから、まだまだいけるで。がんばりや」

最後は励ましてもらった。
どなたか存じませんが、長時間有難うございました。