若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

知的で誠実そうな目

きのうは、高校美術部の後輩Aくんと飲みました。

「サンマ皿ができたので、いつもの店で飲みましょう」と電話があったんです。

Aくんは焼き物が趣味で、これまでも何度も作品を押し付けられ、じゃなかったプレゼントされてます。
箸置き、猪口、ぐい呑、小皿、小鉢、から、最近では人の嫌がる、じゃなかった人もうらやむ直径50センチの大皿、直径30センチの大鉢まで、いろいろもらってます。

年末に彼の肖像画を描きました。
私が押し付けた、じゃなかったプレゼントしたんです。

描き終わって、家内と三人でお茶を飲んでるとき、Aくんが、「お礼の印に、なんか焼いてきましょう!」とよけいなこと、じゃなかったうれしいことを言ってくれました。

「う〜ん・・・」と天井を見上げてうなってたAくんが、「これくらいの」と、手で細長〜い四角を作って、「サンマを入れる皿を作りましょう!」と言った瞬間、家内がはじかれたように立ち上がって、食器棚へすっ飛んで行って、「サンマを入れる皿って、これですよね」と5枚の皿を見せたんです。

「そうそう!こういうのです。こういうのを5枚焼いてきます」
「・・・あ、あの、どうせいただくなら、これくらいの小さい角皿が」と、手で10センチくらいの四角を作ったのを見て、「奥さん!それではサンマが入りませんよ!」

Aくんの頭の中では、サンマ皿5枚で決定済みのようでした。

「年末年始は私も忙しいんで、すぐというわけにはいきませんよ。ま・・・そうですね(と、手帳を開いてスケジュール確認)、う〜ん・・・2月にはなんとかお渡しできるでしょう」

なんだか恩に着せられるような形で押し切られてしまい、「今日の佳き日」を迎える運びとなったのであった。

いつもの店で5枚のサンマ皿を手渡されて、まず思ったのは、重いということであった。
皿だけでも重いのに、どういうわけか奄美大島のみかんも10個くれた。
たいへん重かった。

皿を作る苦労話をいろいろするんですが、私の絵の話は出ない。
しびれを切らして聞きました。

「あの絵、奥さん、何か言ってた?」
「・・・まあ、似てるけど、目がちょっと違うて言うてました」
「お母さんは?」
「おふくろもね、似てるなあ、けど目がちょっと違うって言うてました」

そこへ、店のおかみさんがやってきた。
おかみさんは私たちと同年代で、Aくんは古〜い馴染み客だから、全然遠慮がない。
私とAくんが高校美術部の先輩後輩ということも知ってる。

Aくんは、ケータイを取り出して、私が描いた肖像画の画像を黙っておかみさんに見せた。
見た瞬間、おかみさんは、目を丸くしてニタ〜ッと笑った。

「ええ〜〜!これはあかんわ!」

ニヤニヤニタニタ画面を見つめてる。

「これはないでしょう!」

そう言われては私も穏やかじゃないです。

「でも、似てるでしょ」
「似てますよ!似てるけど、目が全然違いますやん。すごく知的で誠実そうな目ですやん。Aさん!自分の顔、どう見てますのん?こんなふうに見えるから、こんなふうに描いたんですか?」

あれ?
おかみさんは勘違いしてる。
Aくんの自画像と思ってる。

「違うよ。それ、私が描いたんよ。Aくんをモデルに私が描いたの」
「・・・あ〜あ!そうなんですか!へ〜!Aさん!先輩ってありがたいですね!これやったら、私も描いてほしいわ。この絵で見たら、Aさんがすごく知的で誠実な紳士ていう感じですやん。・・・毛も増やしてもらって・・・」

Aくんはおかみさんからケータイを奪い取って、黙々と飲み続けたのであった。

↓問題の画像。