若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

話をあわせる

はなちゃんが去って、また私たち夫婦二人の淡々とした日常が始まった。

が、世の中には、そうは行かない人もいる。

カルチャセンター人物画教室の女性Aさんは、娘夫婦が、二月末に、一歳の孫を連れてロサンゼルスに旅立った。
ウチとそっくりのパターンだ。

向こうの孫は男の子で一歳、はなちゃんは女の子で六ヶ月。
向こうは2月28日出発で、こっちは3月8日。

よく似てますね。

Aさんは、娘夫婦が東京に住んでいて、出発前の二月に、一週間だけ娘と孫を預かった。

ウチは、娘夫婦が神戸に住んでいて、出産以来六ヶ月、娘と孫を預かった。

きのう、そのAさんが私に話しかけた。

「鹿之助さん、さびしいでしょう。六ヶ月ですもんねえ。ウチは、一週間預かっただけなのに、さびしくてさびしくて。お宅は、六ヶ月!可愛い盛りでしょ。たまらないでしょう。いつロサンゼルスに行かれるんですか。私たちは7月に行く予定です。私は5月には行きたいんですが、主人の仕事の都合があるもんで」

涙を浮かべて語るAさんに、そっけなく、「いや、特にさびしくありませんよ」というのもアレだから、話をあわせる。

「ほんとにさびしいもんですねえ。昨日もデッサン教室から帰る電車の中で、ああ、家に帰ってもはなちゃんはいないのか、と思っただけで、つまら〜〜ん!という気がしましたよ。家で、はなちゃんが遊んだおもちゃを見ても涙が出るし、困ったもんです。お宅は7月ですか。よくがまんできますね。ウチは4月か、できたら来週にでもロサンゼルスに行こうかと、家内と相談してるんです」

本気でそんなことを考えているわけではないが、Aさんに話を合わせておいた。
Aさんは、そうでしょうそうでしょうと、大きくうなずいた。

「奥さん、泣き暮らしてはるのとちがいます?私なんか、孫の布団もかたづけられなくて」

話をあわせてあげたいが、こんな人には付き合ってられない。

「うちは、あっさりしてますよ。今朝、家内が、『はなちゃんの紙オムツ、捨てようか』、というんで、『まだ捨てることはない、置いておけ』と言ったんです」
「まあ!それは、もったいないですわ。またお正月には帰ってきはるでしょうし」
「いや、はなちゃんが最後にウンチしたオムツなんですがね。捨てられませんよね」
「・・・おたく、ちょとやばいんじゃないですか」

そうかな。