今日は散髪。
私の顔を見ると、おかみさんが、「ロンドン、行ってきた？」
「ロンドン？ロサンゼルス！」
「あはは、なんか、『ロ』がつくとこやと思てたわ」
主人は、「ロサンゼルスで、馬、走ってた？」
いいコンビです。
おかみさんにひげをそってもらってると、主人は、隣の椅子で、なじみと思える高齢の客を相手に釣り談義。
客は、しゃべり方がややもったりしていて、トシを感じさせるが、つりは相当盛んにやっているようだ。
主人も、自分の船を持っているくらいだから、大いに話がはずむ。
「先週は、○○鯛がつれてなあ」
「○○鯛は、刺身にしたらうまいですからねえ」
「うん、刺身にしたらうまいね。身がしまっててね」
「そうです、身がしまってますからねえ」
「その前は、△鯛がつれてね」
「ああ、△鯛は、うまい魚じゃないですね」
「あれは、うまい魚やないね」
「釣るのは面白いですがねえ」
「うん、釣るのは面白い。その前は、××がつれた」
「えっ！××ですか！高級魚ですがな！」
「高級魚やね」
「あれはうまいですねえ」
「あれはうまいね」
「この前、初心者を連れて行ったら、その人が大物を釣ってねえ」
「そういうことありますねえ。初心者が不思議と大物を釣りますねえ」
「それで釣りにはまるんやねえ」
「それで釣りにはまるんですなあ」
非常に話が合う。
聞いていて気持ちいいくらい合う。
伊勢、和歌山、瀬戸内、若狭湾、あちこち行きまくってるようだ。
顔を見ると、80歳くらいかと思ったが、元気さからすると70代だろうか。
「こないだ、風でえらい目におうてねえ」
「天気予報、見はりませんでしたん？」
「いや、見て行ったんやけどねえ」
「天気予報はね、スポーツ新聞の釣り欄に、現地のエサ屋なんかの広告出てますでしょ。そこに電話して聞きはったらええんですわ。僕ら、いつでもそうしてます。天気予報は新聞ですか？」
「いや、インターネットで調べてます。インターネットで、釣り情報のページに、天気予報とか釣れぐあいとか、詳しゅう出てますわ」
「は〜！インターネットですか？！たいしたもんですねえ。僕ら、そっちは全然あきませんワ」
主人はしきりに感心していた。
その客が帰った後も感心し続けている。
「あのトシでなあ、頭も身体もたいしたもんやなあ！」
「あの人、いくつ？」
「91歳」
す、す、すばらしー！
