若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

ぶーぶー

昨日は、人物画教室。

先輩女性Aさんは、文句の多い人である。
いつも、ぶーぶー言ってる。

「画歴だけは長いんやけどねえ」というのが口癖である。

ふつう、画歴だけは長いんだけど、と言えば、謙遜の言葉だ。
ところが、Aさんが言うと、「謙遜してる思うたら大間違いやぞ!」的凄みがにじみでている。

「マに受けとったらえらいめにあうで!」的迫力がある。

たしかに、画歴は長いのであろうし、話を聞いていると、美術史に関する造詣も深い。

まあ、なんちゅうか、しおらしいところがないんですな。

少々のことでは驚きませんが、驚くこともある。

ふっくらしたモデルさんが来た時、モデルさんの正面に座ったAさんが、「ちょっと太りすぎやね」と言ったことがある。
これには、「絶句!」というより、「死ね!」という感じであった。

モデルさんは、「すみません」とあやまった。
Aさんは、「いいのよ。かわいいから、いいのよ」と、寛容な笑顔で答えたので、和やかな空気が流れた、てなわけないですよ。

今描いてるモデルさんは、帽子を持ってきた。
帽子をかぶった時、「モデルさん、帽子似合わんわ」と言ったのにも、「絶句!」であった。

そのAさんが、きのう、先生に、デッサン力を付けたいのだがと相談していた。

「石膏デッサンもいいけど、しんどいでしょう。木炭で描くのも面白くないし」

先生は、「ここでモデルさんを見て、パステルでも鉛筆でもいいから、しっかりデッサンをすればいい」と言った。

Aさんは、「いいモデル、おらんから」と言い放った。
「描く気を起こさせるようなモデルがおらんもの」

先生はあくまでも温厚である。

「そんなこと言うたら、昔の画家はどうなるんですか。プロのモデルなんかいなかったんですよ。百姓女や洗濯女をつれてきて、描いとったんですよ」

画歴が長く、美術史に関する造詣の深いAさんが、先生の言葉に心から納得したからかどうかは知らないが、珍しく黙り込んでしまったので、私はスッキリ気分よく描くことができたのであった。

ぶーぶー言う人が黙り込むのは気持ちいいから、ブーブー言う人は必要であると言えるかもしれない。