今日は、散髪。
先客と主人が、病気の話で大いに盛り上がっている。
私が椅子に座ると、奥さんが耳元で、「このごろ、どのお客さんも病気の話ばっかり!」といまいましそうにささやいた。
そういう奥さんだって、いつ行っても、足が痛い腰が痛い腕が上がらない、整形外科でどういわれた、整骨院でどういわれたというような話ばっかりなんですよ。
先日、家内の中学時代の友達が何人か集まったら、やはり病気の話ばっかりだったという話をしたら、奥さんも最近中学の同窓会に出たと言う。
「70歳の記念の同窓会・・・あ!トシばれた!」
奥さんのトシに関心なし。
帰りに、額縁を買いに行った。
いつも行く画材屋は、間口が狭く、奥に細長い。
入り口の絵の具の棚付近に客がいると困るのであるが、入り口の絵の具の棚付近に客がいた。
私と同年輩の男性で、コートを着て、一見サラリーマン風だが、平日の昼間だし、はいている靴が、ピカピカのスニーカーなので、退職して油絵を始めたばかりの人なのだろうと推理する。
私も、絵の具を選んでから額を買おうと思うが、男性が絵の具の棚から動かない。
よほど迷っているようだ。
待っていてもしかたないので、後ろを通してもらって、奥で主人に相談しながら額を選ぶ。
選ぶのに時間がかかるが、さっきの男性は、しゃがんだり立ち上がったり、エンエンと絵の具の棚を見ている。
私が、やっと決めて金を払ってたら、レジに男性がやってきた。
溶き油一本と、非常に細い筆を一本持ってる。
絵の具の棚の前で散々迷った挙句、絵の具は買わず、油の小瓶一本と、面相筆一本とは。
この人、わかってるのかな。
と心配してたら、主人がペコリとお辞儀して、「ご準備は、すすんではりまっか?」
男性は、「まあ順調。8月までにはだいたい仕上がってると思うから、8月に入ったら、額縁一そろい持って来てよ」
「はい、承知しました」
「100号は、仮縁にしとくけど、20号、30号、50号あたりは、本縁に入れるつもりやから」
「はいはい、そしたら、50号以下の額を、色々取り揃えて、お持ちして見ていただくということで・・・」
失礼しました。
定年退職後に油絵を始めたばかりの人ではなかったようです。
お見それいたしましたが、ピカピカのスニーカーはいいとして、なぜ絵の具の棚の前であれほど悩んだのか、ナゾである。