若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

額を選ぶ

額縁を注文しに行きました。

毎度おなじみの額縁屋です。

家族でやっていたのが、今は息子だけです。
息子といってもかなりのトシですが、私にとっては二十数年前の感覚で、いまだに「額縁屋のおにいちゃん」です。

きのう駅前の店に行ったら、おにいちゃんが出てきて、いつもの額縁選びが始まりました。
まあ、この店の儀式みたいなもんで、額を買うとき毎回コレです。

きのう持って行ったのは、完成間近のこの絵です。

この絵を見たおにいちゃんは、う〜ん、とうなって、「バックの色に合わせるとしたら、黒の額ですねえ」
「じゃ、黒にしようかな」
「しかし、服の色に合わせるとしたら茶色ですね」
「じゃあ、茶色」
「しかし、顔の色に合わせるとしたら、淡い色の方がいいですね」
「じゃあ、淡い色」
「いや、待ってください。古典的な絵ですから、そういう意味では基本的には黒ですよ」
「じゃあ、黒」
「しかし、古典的な絵といっても、若い娘さんの絵ですから、そういう意味では淡い色の方があってるとも言えます」

想定内の問答です。
いつものおなじみのパターン。
この店で、あっさり額が決まると思ったらおおまちがいです。

額縁を選ぶのに、バックの色に合わせるか、服の色に合わせるか、顔の色に合わせるか、基本的なパターンなんでしょう。
おにいちゃんは、基本に忠実なんですね。

エンエンとこの問答が続いて、いい加減イライラしてきた私が、業を煮やして、「茶色!」と宣言すると、待ってましたとばかりにおにいちゃんが、「わ、若草さん、そ、その額なんですけどね、ひとつ問題がありまして、お、お、お値段がですね、ちょっとですね、ウチが扱ってる中ではですね、ちょっとですね・・・」

おにいちゃんが身をよじって苦悶の表情を浮かべて値段の話をするのもいつものパターンなんです。

高いと言っても、五百円か千円くらいなんです。

「だから、いつも言うてるでしょ。少々高くても、絵が見栄えのする額!」
「い、いや、こ、この額は、ちょっと半端なお値段じゃないんで・・・それに変形で別注ですから、とにかくお見積もりをさせて頂いてから決めていただくということで」

「茶色でいい!茶色に決めた!」
「い、いや、お見積もり・・・いや、若草さん、やっぱりですね、いっぺんこの二つの見本を持って帰って頂いて、奥さんに相談されて、奥さんのご意見を聞かれてからということで・・・」
「なんで私が描いた絵の額を家内に相談せんならんの」
「い、いや、やっぱりですね・・・」

おにいちゃんはウチに何度も来てますから、我が家の力関係を知ってるんです。

帰り際に、おにいちゃんが、「ところでお酒の方はいかがですか」と聞きました。

前に来たとき、酒を飲む気がしなくなったという話をしたんです。
あいかわらずだと言ったら、「甘酒を飲んだらどうですか」としきりにすすめるんです。

なんで私が甘酒を・・・と思ってたら、追い打ちをかけるように、「しかし、若草さん、今回、画風がだいぶ変わりましたね」

あのね〜、画風が変わったもなにも、何百年前の絵の模写ですがな。