あまり気は進まなかったけど、見ました。
なんといっても「南極越冬隊」は、わが人生最初で最後といっていい「国家的イベント」でしたから、見てしまいました。
小学3年生から4年生にかけてのできごとだったと思います。
どれほど私の胸を打ったか。
昭和57年発行の『南極第一次越冬隊とカラフト犬』という本を買ったくらいです。
買った本をどんどん処分する私が、いまだにこの本を持ってる。
それほど子供心をゆさぶった「壮挙」だったということです。
じゃあ、喜んで見ればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、昭和30年の話をテレビでやれるのか?という心配がある。
このドラマは男たちが主人公でしょう。
子供や女性は「昭和30年」の顔もできるけど、男は難しいように思うんです。
ドラマが始まると、主人公キムタク、さっそうと登場。
やはり、昭和30年の顔じゃない、と思います。
東大助教授のキムタクは、学生時代の山岳部での遭難事故が心の傷となっている。
その時なくした友の慰霊のため、いま絶壁を登っている。
切り立った垂直の崖に金具を打ち込み、全身の力を手にかけてよじ登ろうとした瞬間、手が滑り落下する。
必死でロープをつかんだキムタクが、形相もすさまじく、「ファイト〜〜〜!いっぱ〜〜つ!」と叫ぶかと思ったら、すさまじい形相はしたけど、叫ばなかった。
ここは叫ぶとこでしょう。
民放だもの。
このほかにも違和感が残る部分もあったけど、最後まで見ました。
『南極第一次越冬隊とカラフト犬』によれば、国際的南極観測の話を聞きつけ、これはモノになる!と張り切ったのは朝日新聞です。
朝日新聞は、明治の白瀬南極探検隊を後援したという実績があった。
新聞社のカンで、国民的フィーバーになると予測したんでしょうね。
新聞社が学者をたきつける形になった。
たきつけられた方も困ったようです。
日本学術会議が開かれた。
会長の東大教授茅誠司が「日本として南極観測に従事することに決定いたしますが、それでよろしいか?」と発言したとき、場内はシ〜ンと静まり返ったそうです。
「ここで決定してしまえば、進まざるを得ませんが、みなさんそれで差し支えありませんか?」
シ〜ン。
「それでは、行くことに決定いたします」
テレビドラマよりドラマチックだと思います。
この本は、カラフト犬のことを大きく扱ってます。
南極にカラフト犬を連れて行くことが決まった。
当時、カラフト犬研究の第一人者は、北海道大学応用動物学科の犬飼教授だった、というのも違和感があるが、これは事実だからしかたがない。