若草鹿之助の「今日はラッキー!」

日記です。孫観察、油絵、乗馬、おもしろくない映画の紹介など

頼まれもしないのに

今日は病院。

すわって待ってたら、待合室の壁に小さな油絵が飾ってあるのに気づきました。

まあ上手な風景画です。

はがきより二回りくらい大きな紙に、「寄贈:〇〇××様」と書いてある。
それはいいんですが、その紙は、額縁の下に貼ってあるんじゃなくて、額縁前面にはさんであるんです。

つまり、絵の右下の部分は、その紙で隠れてるんです。
なぜこういうことをするのであろうか。

額縁の下は空いてるんですよ。

まあ、油絵なんてそういう扱いですね。
壁の一部というか、あってもなくてもいいというか、ないほうがましというか、ひがむわけじゃないけど、そんなもんです。

後ろの席に二人連れの女性が来た。
80代くらいのお母さんと、付き添いの娘さんという感じです。
上品そうなお二人であった。

お母さんが、何かもごもご言った。
娘さんが大きな声で言い返した。

「だから、やめてって!頼まれもしないことをするのやめて!いつも言うてるでしょ。頼まれもしないことはしないでって。それが困るのよ。どうして頼みもしないことをするの!」

お母さんが、もごもご言った。

娘さんがピシャリと言い返した。

「黙ってて!ちょっと黙っててくれる?!お願いやから黙っててちょうだい!」

しばらくすると、名前を呼ばれて二人で診察室に入っていった。

しばらくすると、二人で診察室から出てきた。

にこにこ話しながら会計のほうに行くところを見ると、仲の良い親子なんだろうと思いました。


私の前を、70代半ばと思える女性が通った。
私の横にすわってた同じ年頃の男性が、「Aさんじゃありませんか?」と声をかけた。

女性は立ち止まって、「はあ、Aですが・・・」と首をかしげた。

「以前、〇〇でよくお見かけしましたなあ」(〇〇は聞き取れませんでした)

「・・・はあ、〇〇にはよく通いましたが、でも、ずいぶん昔のことですよ」
「そうですなあ、ずいぶん前のことですなあ」
「二十年・・・いえ、三十年ほど前ですね」
「そんなもんですかなあ」
「すごい記憶力ですねえ」と感心しながら女性は立ち去った。

ちょっと気になるような、ぜんぜんどうでもいいような三十年ぶりの再会であった。