「どうでもいいことを書く」というタイトルで、はは~ん、この日記のことだなと思う人が多いと思います。
イギリスの歴史家ウエッジウッドさんの随筆の中で、そういう日記が紹介されてるんです。
ウエッジウッドさんはイギリスの17世紀、清教徒革命の時代が専門です。
その時代を専門とするものは幸せだと書いてます。
公文書、日記、政治パンフレットなど文書資料が多いうえ、その文章がいいんだそうです。
17世紀初めは「英語の青年時代」だそうです。「青年時代の英語」を楽しめる。
ふ~ん、と思います。
「日本語の青年時代」ってあるのかな。
夏目漱石の日本語に若々しさを感じる、ことはないですね~。
ウエッジウッドさんはいろんな日記を紹介してます。
リチャード・シモンズという人の『従軍日記』が楽しい。
この人は、チャールズ1世の護衛兵として各地を転戦して王党軍の活躍を記録するつもりだったようです。
ところが、激しい好奇心の持ち主で、目につくものは何でも書いた。
どこそこの町でおかみさんが頭に鍋を乗せてミルクを買いに行ってたとか。
とくに名所旧跡見物には夢中になった。
「従軍記」というより「名所旧跡旅日記」みたいになってしまった。
有名な教会のある地域に夜到着して、次の朝早く出発ということになると、夜のうちに教会見物に出かけるんです。
戦争の最中ですよ。
いちおう、軍事行動については「何時到着、何時出発」という感じで書いてるんですが、教会のことは非常に詳しく描いてる。
ソールズベリー大聖堂なんか感激のあまり無茶苦茶詳しく書いてて、清教徒革命の決戦ともいえるネーズビーの戦いの20倍くらいの分量だそうです。
ウエッジウッドさんは、歴史家としてはそういう日記も時代の雰囲気がわかってありがたいと書いてます。
これを読んで思い出しましたが、以前徳川幕府の長州征伐の本を読んだことがあります。
その中で幕府軍の武士の日記が紹介してあったんですが、シモンズさんとまったく同じで「大阪の料亭でどんちゃん騒ぎした」というようなことばかり書いてました。
いつの時代もどこの国でも似たような人がいると思うと気が楽です。