大学時代ホテルでエレベーターボーイのアルバイトをした時のことをいろいろ思いだしました。
課長(?)以下、テレビドラマに出てくるホテルマンみたいな人たちでした。
ホノモノだから当たり前か。
「ボーイ長」は背の高い苦み走ったいい男で「まじめ!」という雰囲気でした。
若手ボーイの「水商売志望」君は、ボーイ長を尊敬してると言ってました。
あんなふうになりたいと言いながら、「あの人、何が楽しくて生きてるんだろう」とも言ってました。
そんな「ボーイ長」が「課長」とおしゃべりしてた。
「課長」の定期券入れを見ながら、「通勤の3、40分、別に2等に乗らなくてもいいのに」と笑って冷やかした。
「課長」は定期入れを奪い取りながら、「ミエ張りたいだけなんだからいいだろう!」と言い返した。
当時の国鉄は「2等車」というのがあったんですね。
「課長」と「ボーイ長」はいい関係なんだなと思いました。
深夜、客の姿もない4階のエレベーターでぼ~っと立ってました。
この時間帯は実にヒマでした。
エレベーターの向かい側がクロークで、ボーイはふつうカウンターの前で立ってるんですが、その夜「ボーイ長」はカウンターの中でビシッと立ってました。
ぼ~っと立ってる私とビシッと立ってる「ボーイ長」の目が一瞬会ったんです。
「ボーイ長」はかすかにほほえむと、「ヤッ!」と短く声を発したかと思うとカウンターにぱっと手をついてひらりと飛び越したんです。
体操選手みたいでした。
「跳馬」の感じ。
見事に着地すると私にウインクして歩いていきました。
謹厳実直という感じの「ボーイ長」の跳躍は実に不思議でした。
謹厳実直の「ボーイ長」が夜な夜なじゃないかもしれんがホテルの厨房に忍び込んでアイスクリームを盗み食いしてるというのも不思議でしたが。
若手ボーイの「不良君」と二人で当番の時、外人男性の泊り客が来た。
「不良君」が私に客室に案内してこいというんです。
客室なんか知りませんよ。
そう言ったんですが、「カギあけて荷物置いて帰ってきたらいいんだよ!」とすごむので仕方なく部屋に案内しました。
本来、「バスはここです」とか説明すべきなんじゃないかと思いながら日本人特有の謎の微笑を浮かべて部屋を出ようとしたらその外人がさっと手を伸ばした。
何かと思ったら100円玉でした。
はは~ん、これが世にいう「チップ」なのかと感激して受け取りました。
4階に戻ったら「不良君」が笑いながら「チップくれただろ」と言いました。
私に「チップ体験」させてやろうという親心だったんですね。
いいとこある。
「水商売志望君」に「あの子どう思う?」といわれたことがある。
ウエイトレスのひとりです。
ウエイトレスとはあまり接触がなかったので「あの子」のこともよくわかりませんでした。
「だんだんなついてきてるんだけど・・・」と言ったのが意外でした。
「水商売志望君」はスポーツマンタイプのカッコいい若者で、狙いを決めたら即アタック!というタイプだと思ったんです。
慎重にジワジワ攻める人なんだと感心しました。
ふたりでお店を持って仲良く暮らしてるんじゃなかろうか。
知りたい。