イギリスの馬術選手ロンドンオリンピック金メダリスト、カール・ヘスターの本を読んでます。
馬術界のことをまったく知らないので、読んでもよくわからんことが多いです。
馬と選手の関係がよくわかりません。
わかりやすいのは大金持ちが馬を買って自分で乗って試合に出る。
これはわかりやすいですが、カールはよく他人からその人の馬に乗ってくれと頼まれてます。
別の選手に乗ってもらってたけど、次からはカールに乗ってほしいと言われたりしてます。
その人の馬に乗って試合に出ていい成績をあげると馬の値段が上がる。
頼まれてカネをもらうかは書いてない。
あと馬術の競技会が大変多い。
国内競技、国際競技、しょっちゅうやってる。
馬も騎手もヨーロッパを行ったり来たりしてる。
馬を連れて行くだけでものすごくカネがかかると思います。
獣医や世話係も必要です。
マラソン選手みたいに海外遠征はからだ一つと靴一足というわけにいかない。
国際大会では華やかなディナーパーティが選手たちの楽しみのようです。
ロンドンオリンピックの年、カールはオーストリアで開かれた国際大会にイギリス代表として出場した。
その大会は、スポンサーであるオーストリアを代表する大富豪スワロフスキー家の広大な敷地で開催されたんですが、敷地何坪なんて貧乏くさいことは書いてません。
景色がすごかった。
これまで出場したどの国際大会よりも素晴らしい絶景だった。
オーストリアアルプスを背景に広がる緑の草原は、まさにアルプスの少女ハイジの舞台そのものだったと感激してます。
これでスワロフスキー夫人がヤギの乳を絞ったり、スワロフスキー氏がヨーデルを歌ってくれたりしたらハイジの世界そのままなのにと残念がってます。
この大会はスワロフスキー夫妻主催の超豪華ディナーパーティで有名だった。
まずセレモニー。
会場はスワロフスキー家の屋内馬場です。
どんな馬場か想像できませんが、天井からはスワロフスキーのシャンデリアがジャラジャラとぶら下がってたそうです。
馬場にシャンデリアとは!と驚くのは素人の浅はかさ。
なんせスワロフスキーさん、シャンデリアは売るほど持ってますからね。
出場選手、関係者一同、地元の名士、そして『アルプスの少女ハイジ』から抜け出てきたような民族衣装の子供たちが招待されてた。
選手ひとりひとりスポットライトを浴びて紹介された。
そのパーティでおかしなことがあった。
「カール、誕生日おめでとう!」と言われたのだ。
「え?ちがいますよ」
しばらくするとまた「カール、今日が誕生日だってね。おめでとう!」
「い、いや、ちがいますけど」
しばらくするとまた「誕生日おめでとう!」。
どうなってるのかと思ったら、「ウイキペディア」にカールの誕生日が間違ってその日だと記載されてたんです。
さて、セレモニーが終わって巨大テントに移動してディナー。
200人ほどが席に着いた会場には立派な舞台があってバンドが準備してた。
ディナーの間演奏するんだなと思ってたら突如照明が消えた。
そして、な、な、なんと『ハッピーバースデートゥーユー』の演奏が始まったではないか。
「ま、まさか!」
顔が引きつった。
演奏が終わるとステージには満面の笑みを浮かべたスワロフスキー夫妻が立ってた。
スワロフスキー氏がマイクに向かった。
「ご列席の皆様方に素晴らしいお知らせがございます。今日はイギリス代表カール・へスター氏の誕生日です!」(盛大な拍手と歓声)
「ささやかではございますが私どもからプレゼントを贈呈したいと思います。カール!ステージへどうぞ!」(盛大な拍手と歓声)
ステージに上がってスワロフスキー夫妻に「今日、ボクの誕生日じゃないんです」とは言えませんよ。
カールはひきつったような満面の笑みを浮かべて謝辞を述べたそうです。
そして、スワロフスキー氏からはバースデイプレゼントとしてスワロフスキーのアクセサリー一年分、奥さんからは巨大バースデーケーキを渡された。
右手にプレゼント左手に巨大ケーキを抱えて逃げるように席に向かうカールに知り合いのカナダの選手が声をかけた。
「カール!誕生日おめでとう!」
ジャケットの裾をぎゅっとつかまれたので急停止してしまって、左手のバースデーケーキがすっ飛んで床にぶっちゃ~っとチョコレートと生ケーキが飛び散ったそうです。