チャイムが鳴ったのでモニターを見たら自治会のKさんだった。
ウチを訪ねてくるような間柄じゃないけどなあと思いました。
私が2015年に初めて自治会長を引き受けた時の班長さんでした。
27人の班長さんの中で最初に名前をおぼえた。
5月の班長会議で前年度の決算書をまわしたんですが、Kさんが手をあげてクレームをつけた。
新米の私には何のことかわからなかった。
前年度会長で顧問として残った自治会のドンAさんが不機嫌さむき出しの丸出しで「気を付けます」とぶっきらぼうに答えた。
班長会が終わってからAさんが相変わらず不機嫌さむき出しの丸出しで「Kのボケが、ドンガラばっかり大きいて」と吐き捨てるように言った。
Kさんは身長は私と同じくらいですが頭が小さくて体がごついのでかなり大柄に見えます。
Kさんはこれまでも自治会のドンAさんに何度もクレームをつけてきたようなうるさ型なんだろうと思いました。
6月のバス旅行でそのKさんが私の隣にすわったのでちょっと緊張しましたが、話はおもしろく気さくないい方のように思いました。
私より2歳下で、この町が開かれてすぐ18歳の時に両親と大阪から引っ越してきた。
独身のKさんが認知症の母親を見ている。
趣味は合唱。
Kさんが班長をやめてからは、二、三度駅行きのバスでいっしょになったことがある程度です。
そのKさんが何の用だろうか。
「実は今週末に引っ越すことになりまして」
お別れのあいさつでした。
母親は見送ったし、庭の管理が大変になったし足は痛むし一年ほど前からあれこれ考えてすぐ近くのマンションに移ることにした。
父が遺した本、母の書道道具、自分が集めたLPレコードやビデオテープやカセットテープの整理で大変だそうです。
名残惜しそうにいろいろ話すKさんを見ながら考えてしまった。
私が引っ越すとしてKさんにあいさつに行くかな。
行かんな。
そういえば、私が2回目の会長をした時の班長の男性も引っ越しのあいさつに来たな。
その人は班長会議でいつも苦虫を噛み潰したような顔をしてた。
何か言われるんじゃなかろうかと心配でした。
年度末近かったと思うんですが、その人がウチに来たのでなんか苦情かなと思ったら引っ越しのあいさつでした。
男の一人暮らしだと自治会長くらいしか引っ越しのあいさつする相手がないのかな。
Kさんは最後に、「Aさんはお元気ですか。おっさんにあいさつする気はないんでよろしゅう言うといてください」と言って去っていった。