J・E・スミス著『アイゼンハワーの戦争と平和』を読んでます。
1959年、冷戦の真っ最中にソ連のフルシチョフフ首相がアメリカを訪れてアイゼンハワー大統領と会談、意気投合してます。
西部劇ファンのフルシチョフは大統領別荘で西部劇を見せてもらってご機嫌だったというんですが、スターリンも大の西部劇ファンだったそうです。
フルシチョフによれば、スターリンは西部劇を見終わるといつも「この映画のイデオロギーは」と激しく非難したそうです。
で、次の日また西部劇を見て激しく非難して、また次の日、という感じだったそうです。
このときの会談でアイゼンハワーはフルシチョフにぶっちゃけた話をしてます。
「ウチの軍隊のえらいさんたちが来ては『大統領、ソ連が無茶苦茶軍備を拡張してます。このままではやられてしまいますからこっちも・・・』というんですよ』
「いっしょですがな!ウチも軍隊のえらいさんが来ては『首相、アメリカが無茶苦茶軍備拡張してます。このままではやられてしまいますからこっちも・・・』と言うんで軍事予算がふくらむ一方ですわ」
「いっしょやいっしょや!」と二人がはしゃいだか、深刻な表情になったかは書いてない。
今は「中国の軍拡に対抗するために」ということですね。
アイゼンハワーは任期満了に際して国民に演説してる。
「第2次大戦までアメリカに軍事産業はなかった。クワやスキを作る会社が剣を作るという感じだった。今アメリカには巨大な軍事産業が存在する。そのうえ300万人以上の国民を軍をはじめとする防衛部門にかかえている。このことがアメリカに大きな政治的、経済的、精神的影響を与えている。」
ここから有名な「軍産複合体」に対する警告発言になる。
つづけて政治の学問支配を批判してます。
「自由な学問世界はアメリカにとって非常に重要なのに、巨額の国家予算が知的好奇心を縛り学問の世界をゆがめている。」
この本は伝記なんでアイゼンハワーのえらいとこを書いてるんでしょうが、えらいと思います。
「大砲や戦艦やミサイルは、つきつめて言えば、食べるものもなく飢えている人や着るものもなく震えている人から盗み取ったものなのである」
それならなんでやめないの?
アイゼンハワーの言い訳は「大統領は議会の決定を実行するのが役目」ということになるようです。
著者によれば、アイゼンハワーは合衆国憲法を心から信頼し重んじた最後の大統領だそうです。
だとするとものすごくえらい人である。